とにかく回転率を上げたい店は、内装を赤くする

先にも述べたように、赤は興奮をもたらす色です。興奮は脈拍や呼吸、心拍数の増加を引き起こし、消化液の分泌とともに「疲れ」をもたらします。そのため、内装を赤くすると来店客の滞在時間が短くなり、回転率が向上します。イメージとしては「ガッツリ食べてもらって、さっさと帰ってもらう」といったところでしょうか。

こうした、内装の色の使い方は他にもあります。たとえば、入店前の待合スペースに寒色系を使ったり照明を落として暗くすると、来店客の心が鎮まって待ち時間が気になりにくくなる効果があります。とりわけ黒は高級感を醸し出す色なので、店の入口の雰囲気作りも兼ねて使われるケースも多々あります。

料理と反対の色のお皿を使う

「色の使い道」はなにも店の内装だけではありません。来店客が自分でお皿に料理を盛りつける「ブッフェスタイル」の店で行われた実験により、お皿の色も食欲に影響することがわかっています。

使うお皿の色をじっくり考えたことがある人はあまりいないでしょう。実はその色も、食べる量に影響しているのです。例えば、白いパスタ皿を考えてみましょう。黒いお皿に白いパスタを載せるよりも、白いお皿に載せるほうが、22%多くよそってしまう傾向があることがわかりました。

なぜか? 何色が良いということではなく、食べ物とお皿の色のコントラストが弱いほど、人は食べ物の量を意識しなくなる傾向があり、つい量を多く盛ってしまう。つまり、お皿の色を変えることにより、お客さんを錯覚させて、自然に食べる量を減らすことができるのです。

(『パスタは黒いお皿で出しなさい。』氏家秀太著 p.53より、強調部分は編集による)

この実験結果を言い換えると、「白+白の組み合わせで得られる満足度」を「白+黒の組み合わせで得られる満足度」と同等にするには量を22%増しにする必要がある、ということになります。

タルトはカラフルなものがよく出る

お皿の色ではなく、食べ物自体の色に関する実験結果もあります。

(photo by skyyuu/photoAC)
タルトはカラフルなものが選ばれやすい(photo by skyyuu/photoAC)

ケーキバーなどでは、カラフルなほうを、お客さんはより多く取ってしまう。シンプルな洋ナシタルトより数種類の彩豊かなフルーツタルトのほうが、4倍も出るスピードが速いのです。

このように、人は単色よりもカラフルなほうをたくさん食べる傾向にあるのです。これは、より多くの種類を食べて「幸福感」を得たいという深層心理が働くから。

(同書 p.54より)

料理は味はもちろん、香りやその場の雰囲気、そして見た目など五感で楽しむものです。記事中の例ではパスタとタルトを引き合いにしましたが、下の引用部分にあるように「お皿や食材と色彩の深い関係」はさまざまなシーンで応用が利きます。

パスタの例からもわかるとおり、単色の食べ物を「反対色のお皿」に盛ると、量は減るということなのです。白系の料理を食べるときは、お皿をまず黒色に変えてみると、食べる量が減るということになります。

デザートもなるべくシンプルなものを選べば、食べる量が少なくなって、お店側も食材の量が減って原価が低減できますし、ダイエットしたい人も楽しんで痩せられます。

(同書 p.54より、強調部分は編集による)

ここではお店で使われている色と食事の関係を見てきましたが、みなさんもこれらをダイエットなどに応用して、よりおいしく食べる工夫をこらしてみてはいかがでしょうか。