このように大きな地球を、知識の面で俯瞰しようとするのが「地球科学」の試みです。俯瞰するというのは、全体と部分の関係を理解しようとすることでもありますので、地球科学の知識を携えて俯瞰することによって視覚と知識・経験がリンクし、深い感動をもたらしてくれるはずです。
地球のスケール感
地球の計り知れない威力を感じる現象に火山噴火があります。2013年11月に40年ぶりに噴火した西之島では、噴出した新しい溶岩が、元からあった島をほとんど飲み込んでしまいました。島の面積は2年間で0.22km2から12倍の2.64km2に拡大したそうです。なんと大きな噴火なんでしょうか。
しかし、ニュースで映像を見ているだけでは、そのスケール感は伝わらないだろうなと思います。普通、比較対象となる経験を持っていないからです。
私は、有珠山が噴火した後に現地を視察したことがあります。ちょうど洞爺湖温泉に知人がいるので案内して頂き、噴火自体はかなり収まっているものの、まだ白い湯気が勢いよく立ち上っている頃のことでした。
好奇心で火口に近づいてみようと思った矢先、高いところから落ちてきた火山礫(かざんれき)がヘルメットに当たりました。見上げると、空高く火山礫が吹き上がっており、バラバラと音を立てて降ってきたのです。ごく小規模な水蒸気爆発が起こったようでした。
鉄筋コンクリート3階建の建物の1階に、直径数十cmの大きな噴石が突き抜けていましたのを見た後でしたから、急に恐ろしくなって宿に戻ってしまいました。火山噴火を目の当たりにすれば、火山の恐ろしさが身にしみます。その後、ヘリコプターから噴火口を俯瞰したのですが、見た目はアリジゴクの巣のような窪みがある砂山のようなもの。自分が地上で恐ろしいと感じた火山礫の放出も、空からでは認識できない程度の現象に過ぎませんでした。
しかし、現場を見ないままヘリコプターに乗っていたら、そう感じたでしょうか。恐怖を肌で感じるほどの火山礫の放出が、全体から見れば、とるに足らない現象なのだと思えたでしょうか。「俯瞰する」ということは、近寄って見ることとセットになってはじめて、自分のちっぽけさを実感することに効果があるのかもしれません。
東北地方太平洋沖地震が発生した後、津波が海岸に迫っている様子をとらえたヘリコプターからの映像を思い出します。空からはっきり見える白い波がどれほどのものなのか想像して、恐ろしく感じた記憶が残っています。ときに火山が噴火し、時に地震が発生することは、日本列島の宿命です。決して避けることができないし、対抗することなんてできません。