「学問とは何か。人類は何のために学ぼうとしているのか」という一文で始まる『学問のしくみ事典』(日本実業出版社/編 茂木健一郎/監修)は、哲学や経済学、物理学、文学など、あらゆるジャンル、36の学問の歴史とつながりを俯瞰することができる一冊です。
本書の意図はどんなところにあるのでしょうか。
「理系か文系か」なんてナンセンス。領域を超えた教養こそ必要
社会、経済のグローバル化に加え、インターネットや人工知能に代表されるテクノロジーの加速度的な発達によって、私たちを取り巻く環境は複雑に変化する一方です。このような状況に適応するために、私たちはそれぞの立場、領域で専門知識を高めようと学び、工夫し、問題に対処しています。
しかし、本書の監修者である脳科学者の茂木健一郎氏は序文の中で、「現代のように変化の激しい、先行き不透明な時代には、特定の専門領域だけを学んでも、あっという間に時代遅れになり、役に立たなくなる可能性がある」と警告しています。変化のスピードが速く、高度な専門知識といえどもすぐにコモディティ化してしまう時代に私たちは生きている、というわけです。
もちろん、専門知識を深めることも大事です。しかし、このような時代にはむしろ、一見遠回りなようでも基礎から「教養」を磨き、物事を多面的にとらえる視点を得ることがより重要です。学問の領域をフットワーク良く軽々と越えていくような、横断的で学際的な学習が必要とされているのです。
次の茂木氏の言葉は、そのことを端的にあらわしています。
僕は脳科学者です。脳を本質的に理解するために必要な学問分野はとても広く、物理、数学はもちろん、生物学、大脳生理学、認知科学、情報科学、さらには経済学や社会学まで学ぶ必要があります。そうしないと、「本質」に到達することができません。
そのうえでこのように指摘しています。
ある程度の専門性を持ちながら、広範な教養を備えること、それが現代におけるインテリジェンスです。そうした人材がイノベーションを起こして活躍していく時代なのです。
(引用『学問のしくみ事典』「序」より)
本書は、現代人に必要な、物事の本質に近づくための広範な「教養」を身につける入り口なのです。
学問の歴史とつながりをビジュアル図解
『学問のしくみ事典』では、学問の起源を次のように説明しています。
「古代ギリシア人たちは、古代オリエント文明の経験的知識を受け継ぎながらも、自然とは離れた自律した思考を獲得することで、学問の基礎を確立していった」(11ページより)
そうして生まれた学問の発展と変遷は、次の図でたどることができます。