自分の企画の方が内容が良いはずなのに、プレゼンの後で採用されるのは別の人の企画……。そんな苦い経験を1度はしたことがないでしょうか?

実はコミュニケーションにおいて、見た目などの「視覚情報」の次に重要なのが、口調や話の早さ、声のトーンなどの「聴覚情報」。なんと、声が相手にたいして影響を及ぼす割合は約4割にも上ります。しかしビジネスの現場において、見た目や話の内容はチェックするのに、「声」に気をつかっている人は、ほとんどいません。

いったんついてしまった習慣やクセを変えるのは大変ですが、声は少しの練習ですぐに変えることができます。日本初「超絶対音感治療法」のボイストレーニングが話題を呼び、テレビほかマスコミ出演多数の秋竹朋子さんの著書『ビジネスがうまくいく発声法』より、ビジネスパーソンにとって役立つ、具体的な声のトレーニングをみてみましょう。 (※動画を再生すると音が出ますので、お気をつけください。)

1. まず、百利あって一害なしの「腹式呼吸」を身につけよう!

ヴォイストレーニング基本の「キ」は腹式呼吸です。秋竹さんのセミナーや個人レッスンでも、まずは「腹式呼吸」を指導しているそうです。

腹式呼吸には、声を良くすること以外にも様々な利点があります。インナーマッスルが鍛えられることによるダイエット効果や、代謝のアップによる肌のトラブル防止、便秘解消などがそれです。また腹式呼吸を続けていると、体がリラックスして脳がアルファ波を出し、ひらめきや直感を得やすくなります。まさに良いことずくめの「百利あって一害なし」の呼吸法なのです。

声作りの基本としてはもちろん、ひらめきが必要となるビジネスシーンにも役立つ、「腹式呼吸」をまずはマスターしましょう。

ステップ1 正しい姿勢で立つ(プリマドンナ姿勢法)


足は肩幅より少し狭く開き、両足に均等に体重を乗せます。重心は、踵側ではなく、前方のつま先寄りにします。このとき、お尻、背中、肩、首、頭が一直線になるように背筋を伸ばしてください。プリマドンナが舞台に立つようなイメージです。

ステップ2 お腹に力を入れて息を吐きます


右手をお腹にあてて、左手は口の前においてください。冬の寒いときに、手を息であたためるようなイメージで「ハァー!」と息を吐いてみます。それが、腹式呼吸です。息を吸うときは、鼻から自然に入ってくる感じです。

ステップ3 10秒間、息を吐く練習をします。


「1、2、3、4、5、6、7、8、9、10」と10秒間、腹式呼吸で長く息を吐いてみましょう。これを3回やったら、今度は20秒間、長く吐く練習です。それを3回やったら今度は30秒間にチャレンジ。これで約5分間。毎朝、5分間、練習をしてみましょう。1日のはじまりに腹式呼吸をすると、爽やかな気分で活動できます。

(同書18~23ページより)

2. 緊張したときの声の処方箋

人前に立つと緊張してしまって、声がふるえてしまうという人は多いのではないでしょうか。

そんな時、周りの人から「緊張しなくても大丈夫だよ」「あなたらしく話せばいいんだから」と、アドバイスされることがあります。きっとアドバイスした人は、相手を安心させてあげようとして言ったのでしょう。しかし、そう言われても緊張はとけないし、周りに緊張しているのが伝わってしまっている! とかえってパニックになってしまったり……。

具体的な対処法がなければ、簡単に気持ちを切り替えることはできません。そんな時は、緊張してもバッチリ乗り切れる以下の3つの方法を試してみましょう。

処方箋1 腹式呼吸で深くゆっくりと息を吐く


緊張すると呼吸が浅くなります。そういうときは、話し始める前に腹式呼吸で深くゆっくりと息を吐いてみましょう。深い息でゆっくりと吐いていると、緊張が取れていきます。緊張が取れるまで、何度も深呼吸してみてください。緊張さえ取れれば、練習の成果がバッチリ出てくるでしょう。

処方箋2 「アーーー」と限界まで口に出す


人前に立つ前にこの練習を3回やってみましょう。「アーーー」と息が続く限界まで、口に出してみるのです。直前の練習でも、声量がかなりアップしますので、自然と声が出るようになります。


処方箋3 いつもより間を多く取る


人前で話すときは間を多く取るようにしましょう。間を取って、呼吸を整えながら話すようにしましょう。間を取ることで、次の言葉を際立たせることもできますし、聴衆を惹きつけることができます。

次の文を十分に間を取って話す練習をしてみてください。

・私は (間) ○○です。 (間) よろしくお願いいたします。
・みなさん。 (間) これから話すことは、 (間) とても重要です。
(同書86~89ページより)