2015年末から日米の株式市場が暴落したり、アベノミクスで円安傾向が続いていたドル円為替レートが一転して円高の様相を見せたりするなど、相場がにわかに風雲急を告げる様相となっているなか、「やはりあの若林栄四の予測どおりになってきた」というマーケット関係者の声が高まりつつあります。
その若林氏に、2016年の相場予測として『覚醒する大円高』(日本実業出版社)を執筆した背景などについて語ってもらいました。
やっと相場が誰の目にもわかるように動き始めた
僕は、2014年6月に上梓した『富の不均衡バブル』(日本実業出版社)で「米国ダウは大天井であり、いつ暴落してもおかしくない」と書いた後、『異次元経済 金利ゼロの世界』(集英社、2015年3月)でもそのように主張してきました。
そして、いま振り返ってみれば2015年5月の1万8351ドルで米国ダウは天井を打っていたわけですが、相場が横ばいになっていてわかりにくかったものが、8月にかけて3000ドル近く下落し、年末から再び暴落しつつあるということで、やっと誰の目にもその動きが明らかになってきたというところでしょう。
「少しぐらいズレてもいいだろう」とは言いません…
今回の本では、僕の相場予測の方法についても、たとえば20年ぐらいの流れで見ているとか、チャートは四半期足や年足がふさわしいとか、いくつかポイントを書いていますが、やはり長期の相場予測となると数カ月ぐらいのズレが起こることもあります。
とはいえ、相場の行方について「その時期と水準」を明示するのが僕の流儀ですから、「少しぐらいズレてもいいだろう」とは言いません。ただ、神様ではないので、すべてピンポイントで当てるのはさすがにむずかしい…。年に何度か行なっている講演会に来てくださる方にはそのときどきの状況についてお話することもできますが、本の読者に対してはなかなかそこまでのフォローはできないのが、歯がゆいところではありますね。
2015年の夏に為替相場の新たな動きを発見した
これまでの僕の本を読んでくださっている方は気付いているかもしれませんが、実は『デフレの終わり』(日本実業出版社、2011年7月)で「2012年が最後の超円高」と予測して以来、為替相場に関しては「円安に向かうだろう」という程度で、あまり精緻な予測をしていませんでした。というのも、自分のなかでもいくつかの日柄について解析しきれていないところがあったからです。
それが解決したのが2015年の夏でした。僕は寝ているとき以外、四六時中、相場のことを考えていますが、ちょうどニューヨークのリバーサイドパークを散歩しているときに、ふと新しいアイデアを思いついたのです。
そしてそのアイデアを家に持ち帰って黄金分割でチャートを解析してみたところ、これまで自分にも見えていなかった為替相場の動きが明らかになりました。つまり、2012年の75円台から2015年の125円台まで進んできた円安の動きは終わり、再び円高に向かうということです。
2016年末、投資家に大きなチャンスが訪れる
ですから、『デフレの終わり』で「2012年が最後の超円高」と予測したことを修正すると、今回の本に記しました。具体的な時期と水準としては「2022年に1ドル65円をつける」というのが新たな解析による予測です。
ただ、本のなかで詳しく書いているように、その動きは短期的なもので終わるでしょう。かつ、日経平均については2016年末、つまり今年の終わりに底打ちするというところが重要です。
過去の長いデータをみると円高で日本株が下がるという相関関係はないのですが、いま世間一般ではそう考えている人が多いので、この「円高に向かうなかで日本株が底打ち、つまり買い場がくる」という動きを想定しているかどうかで、今後の投資の成果に大きな差がつく可能性があります。
つまり、2016年末には、投資家にとって大きなチャンスが訪れるということです。
若林栄四(わかばやし・えいし)
1966年京都大学法学部卒業。東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行。同行シンガポール支店為替課長、本店為替資金部課長、ニューヨーク支店次長を経て、1987年、勧角証券(アメリカ)執行副社長。1996年末退職。現在、米国(ニューヨーク)に在住。日本では外国為替コンサルタント会社である(株)ワカバヤシFXアソシエイツの代表取締役を務める。
歴史観に裏づけされた洞察力から生み出される相場大局観で、国内外の機関投資家、個人投資家に絶大な人気を誇る。『富の不均衡バブル』『不連続の日本経済』『デフレの終わり』(いずれも日本実業出版社)、『異次元経済 金利0の世界』(集英社)などの著書がある。