――STORY1「ママが考えていたこと」もグッと来ました。
これもぜひ読んでいただきたいですね。実は、本書をつくるにあたって最初にご執筆いただいたのが、このエピソードなんです。これを「お手本原稿」として見せながら、ほかの団体の方に企画主旨やイメージを説明して執筆を依頼したんです。このエピソードがあったから、この本が誕生したと言っても過言ではありませ ん。
このエピソードの執筆者は、「公益財団法人難病の子どもとその家族へ夢を」の大住力さん。取材に出かけたときに、すでにエピソードをご用意してくださっていたんですね。
白血病と戦っている娘さんのいる一家に、ディズニーランドへの家族旅行を、ほかの心配は一切せず、家族全員の笑顔のことだけを考えて過ごす時間と場として提供したときのエピソードです。このママのお話が非常にステキなんです。
大住さんからその話を聞くだけで、もう涙をこらえるのに必死で。大住さんは講演する機会の多い方なので、お話上手なんです。取材後、日本財団CANPANプロジェクトの方と、「もうちょっとで、泣いてました」「私もです!」と話したのを昨日のことのように覚えています。
――STORY11「病棟に響くハーモニカ」もよかったです。
そうですね、「病棟に響くハーモニカ」もぜひ読んでいただきたいです。ご執筆いただいたのは「特定非営利活動法人日本クリニクラウン協会」の方です。クリニクラウンは、小児病棟を定期的に訪問し、遊びや関わりを通して、子どもたちの成長をサポートする赤い鼻をつけた臨床道化師のことです。映画「パッチアダムス」(※クリニクラウンを始めた、実在の医師をモデルとした伝記映画)をイメージしていただくとわかりやすいかもしれません。
書いていただいたのは、クリニクラウンと入院している男の子Aくんの心の交流の物語で、何度原稿を読んでも泣かされたエピソードです。
――最後に読者へのメッセージを
ここで紹介できなかったお話も、心にのこる物語ばかりなので、ぜひ読んでいただきたいです。この本を通じて、NPOの活動に興味をもつきっかけの1冊になればと思います。
発売からまだ数日しか経っていませんが、すでに「電車のなかで涙腺が崩壊してしまいました」という感想もいただいており、非常にうれしく思っています。本書に詰まった「社会の宝」のなかから、「人生で大切ななにか」を見出していただければ、本当にうれしいですね。
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「社会貢献」、「問題解決」というと、とても難しいことのように感じるかもしれません。だれもが、自ら社会の課題を解決し、より良い社会実現のためにNPOで働くというわけにもいきません。では、どうするか?
本書のエピソードを読んで感じた思い、「自分にはなにができるだろう」と芽生えた思いを、長く心に留めておくこと。そして、エピソードの背景にある社会の課題を身近なこととして感じ忘れないでいること。
エピソードを書かれた人たちを「応援したいな」と思ったら、ボランティアやほんの少しの寄付といった形で応援してみる。それだけでいいのです。
さまざまな場所で広がる、やさしさの連鎖を知ってみてはいかがでしょうか。
次のページにて、いしのまきカフェ「 」(かぎかっこ)で実際にあったエピソード、表題作「STORY2 10000円のカレーライス」を特別に転載いたします。ごらんください。