「敬語をしゃべるのが苦手だ」「失礼にならないか心配」……このように敬語に苦手意識を持つ人は少なくありません。
敬語は、正しく使うことができれば、上司や取引先からの信頼も厚くなり、「デキるやつ」と人望が集まる便利なものです。しかし誤用してしまうと、周囲からの評価を落としてしまいかねない、デリケートなものでもあります。
ここでは、フリーアナウンサーとしてテレビ・ラジオで活躍する梶原しげるさんが書いた『敬語力の基本』の第5章「尊敬語を使って好感度をアップする」から、「間違えやすい尊敬語表現」を5つ抜き出して解説します。皆さんがいつも、何気なくしゃべっている表現が出てくるかも!?
「尊敬語」の定義とつくり方
その前にまず、「尊敬語とは何か」と一般的な表現について確認しておきます。
尊敬語は、次のように定義できます。
尊敬語とは目の前で話す相手や、話題になる第三者の行為、ものごと、状態についてその人物を高める表現です。
(102ページより)
そして、尊敬語のつくり方には大きく分けて次の3つがあります。
1. 接頭語「お」「ご」、尊敬を表す漢字をつける
→「お手紙」「ご説明」「貴社」など
2. 一般型
→「お(ご)~になる」(お読みになる、ご帰宅になる)などで尊敬表現にできるもの
3. 特定型
→「おっしゃる」「いらっしゃる」などの特定の言い方に言い換えるもの
(103ページより)
それでは、間違えやすい5つのパターンを見ていきましょう。
間違えやすい尊敬語 1「こちらの商品お持ち帰りしますか?」
お店で買い物をしたとき、店員さんからこのように尋ねられたことはありませんか?
ダメ▶「こちらの商品お持ち帰りしますか?」
これは、尊敬語の典型的な誤用です。なぜ、こうした誤用が多いのでしょうか。
尊敬語のよくある誤用は、謙譲語との混同の結果起こります。ちなみに、謙譲語は次のように定義できます。
謙譲語は、自分側の行為、ものごとについて低めて(へりくだって)相手先を高め持ち上げる方法です。
(146ページより)
尊敬語は相手や第三者を高める表現でしたから、ちょうど反対の方法を取る敬語表現です。
じつは、尊敬語と同じように謙譲語にも定型パターンがあります。「お(ご)~する」がそれで、「私からお話しします」「私がご案内します」のような表現のパターンです。
ダメな例の「お持ち帰りする」は、このパターンを誤ってあてはめてしまったものです。そもそも謙譲語としても成立していません。前述した「尊敬語のつくり方 2.」の一般形「お(ご)~になる」にあてはめて、次のように言うのがおすすめです。
オススメ▶「こちらの商品お持ち帰りになりますか?」
(111ページより)
代表的な一般形尊敬語を下の表に記しましたので、覚えておくと便利です。
間違えやすい尊敬語 2「当駅ではご乗車できません」
次の例。各駅停車しか止まらない駅をご利用の方、次のようなアナウンスを毎朝聞かされていませんか?
ダメ▶「次の電車は通勤快速ですので、当駅ではご乗車できません」