――途中で立ち止まって、確認してもらえると助かりますね。
確認を取りながら話せば、「何が言いたいの?」と言われることはなくなるのではないかなと思います。なぜかというと、お互いに合意をとりながら進んでいるからです。そのため、全部話し終わった後に、「何が言いたいの?」となる最悪の事態にはならないでしょう(笑)。
――なるほど。では、「考える」ことが苦手な方に向けて、アドバイスをお願いします。
今さら数学をやり直したくないし、研修などで訓練するのもイヤですよね。でも普段のちょっとした場面で「考える力」を鍛えることができます。たとえば、人前で積極的に話をしてみる。あるいは会議資料、プレゼン資料の作成を自ら買って出る。
会議資料やプレゼンの資料って、論理的に考えないとつくれないんです。たとえばプレゼンのスライド資料は1枚ずつ前後が線でつながっていないとわかりにくいはずなんです。
だから、ゴールを設定してそのゴールに向かって論理的に考えながら資料をつくるというのはいい訓練になる。あとは、ちゃんと自分で考えながら日記やブログを書くのもいいですね。そんなことを、あえて自分に強制してみてはどうでしょう。
――自分の頭で考える練習をするということですね。
そうですね。ビジネスシーンや普段の生活の中で、「考える」場面を無理やり自分でつくっていくしかないというのが結論です。
あとは、会議資料やプレゼン資料をつくったらそれを口に出して読んでみること大事。もし、実際にしゃべってみて「ん?」と思ったら、それはおそらく線でつながっていないんです。自分で「ん?」と思うということは、聞いている人はその3倍「ん?」って思うと思って間違いありません。
余談になりますが、私は重要なプレゼンテーションや講演会の前は、1人でカラオケボックスに行き、本番のつもりで練習をするんです。その練習の中で、しっくりこないな、おかしいな、という部分は、必ずなにかあるんですよね。たとえば論理矛盾が起こっていたり、前後が線でつながっていなかったり……。
しゃべってみて見つかることって、けっこう多いんです。論理思考って「思考」と書きますけど、頭の中だけで終わるんじゃなくて、実際に口に出してみるということがすごく大事だと思います。
「考える」を味方にしてほしい
――声に出すことで、あらためて論理的かどうかに気づくことができるんですね。今回のご著書でも、数学が苦手なサオリさんというキャラクターが会話の中で考えを整理していく様子が印象的に描かれていますよね。こちらの本は、どのような方に読んで欲しいですか?
タイトルにあるように、「論理的に考える」ことが苦手な方、また「ちゃんと考えている?」と言われてしまう方に読んでもらいたいなと願っています。
あとは、決まった作業はできるけれども、それ以外の仕事になると課題を感じている方に必要とされる本かもしれません。言われたことはできるんだけれども、「あなた、これ考えて」とか「アイデア出して」と言われると、困ってしまう方のお役に立てるんじゃないでしょうか。
――「ここに注目してほしい!」という読みどころはどこでしょうか?
全体に楽しく読めるような構成にしているつもりですが、特に後半の、アイデアを出して、発想力の鍛え方を身につける部分は面白いかもしれません。
また、主人公の数学的思考がサラリとできる大学院生が、仕事に伸び悩むサオリさんから「そもそも、『論理的に考える』って?」と質問されることで、あらためて自分も考え直し、整理をして伝えるということをしているんです。つまり、人に口頭で説明することがいかに論理的思考を鍛えるかを描いた物語でもあるんです。そこも本書の中で注目して欲しいポイントですね。
人間って、質問されると考えます。この会話(インタビュー)もそうですが、質問に対する答えを出してそれを説明するために、私は自然に考えるという行為をしているんです。質問されるから、人は考える。実はこれが、本書を「2人の会話」を中心とするストーリーにした最大の理由でした。
この本をきっかけとして「考える」の基本をしっかり身につけ、ビジネスパーソンのみなさんの人生が今よりもほんの少し、いい方向に変わるお手伝いができたとしたら嬉しいです。
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深沢真太郎(ふかさわ しんたろう)
教育コンサルタント/ビジネス数学の専門家。
BMコンサルティング株式会社代表取締役/理学修士(数学)/多摩大学非常勤講師。
公益財団法人日本数学検定協会「ビジネス数学検定」1級AAAは国内最上位。ビジネスパーソンの思考力や数字力を鍛える「ビジネス数学」を提唱し人材育成に従事。この分野では第一人者として圧倒的な実績と指導力を持つ教育コンサルタント。
これまで延べ5000名以上の指導経験を持ち、「中学生に伝えるつもりで」を信念とする面倒見のよいキャラクターと丁寧な指導技術は多くの研修担当者に「この人でなければできない研修」「なぜこんなにわかりやすいのか不思議」と評される。さまざまな大手企業の人材育成をサポートしており、日本全国の大学からも講義依頼が殺到。担当した講義は100%リピート依頼がくる超人気講師でもある。
主な著書に『数学女子智香が教える 仕事で数字を使うって、こういうことです。』(日本実業出版社)、『仕事に使える数学』(ダイヤモンド社)など多数。