「仕事で明日までにこの分厚い資料を読まなきゃ!」、「資格試験の勉強のために効率的に参考書を読破したい!」、「好きな作家の小説を片っ端から一気に読みたい」など、思ってはいるけれど忙しくて時間が足りない……。
そんな悩みをもつ人は、意外と多いのではないでしょうか。
必要に迫られて読む資料にしても、趣味の読書にしても、きちんと内容を把握しながら速く読めれば、ほかのことをする時間のゆとりが生まれます。
しかし、「内容を理解しながら速読する」ことなんてできるのでしょうか?
「速く読む」と「内容を理解する」の関係を、『脳のワーキングメモリを鍛える 速読ジム』(クリエイト速読スクール:著)から、見ていきましょう。
イラスト/藤田翔
理解しながら速く読める?
「速読なんて怪しい」と思っている人もいるかもしれません。しかし、あのベストセラー『僕は君たちに武器を配りたい』(講談社)の著者・瀧本哲史氏も通っていたクリエイト速読スクールの速読法は、知る人ぞ知る速読メソッドです。各種資格試験などの合格実績に実証され、実際に進学塾の講習で使われています。
この速読メソッドは、「BTRメソッド(Basic Training for Readers method)」というもので、「読書をする人のための基礎的トレーニング法」という意味です。
BTRメソッドは以下3つの柱で構成されています。
1. 認知視野の拡大(目を鍛える訓練)
本を早く読むために、ページ全体を広く見て、瞬時に多くの文字情報を識別する訓練
2. 読書内容への集中(脳を鍛える訓練)
ただ、文字を目で早く追うだけではなく、文字を瞬時にイメージ変換し、効率的に整理・理解する能力を鍛える訓練
3. 読書トレーニング(目と脳をコラボレーションする訓練)
文字の認識能力や読書内容へ集中していく力を、実際の読書の場で実践していく訓練
BTRメソッドの内容については、『速読らくらくエクササイズ』(松田真澄:著、弊社刊)に詳しいのですが、このメソッドの一番の特長は、上記2. のトレーニングメニューがあることです。
よくある速読法では、目の動かし方を訓練して文字を認識する能力を上げるトレーニングメニューだけなのですが、BTRメソッドは「目を鍛える訓練」をすると同時に「脳を鍛える訓練」もするため、読書内容への集中力、そして理解力がアップし、内容を理解しながら速く読むことができるようになるのです。
速読の最終目的は、「いかに速く正確に理解していくか」ということではないでしょうか。
理解力の鍵は脳の「ワーキングメモリ」にあった!
そもそも「理解力」とは何なのでしょうか。
あなたは、本を読んでいるときに、「えーと、何だったっけ?」と、ときどき前の文章を読みなおすことはありませんか? いくら速く読んでも、前の文章で説明された内容を覚えていなければ、後の文章を十分理解することはできません。
いま読んだものを一時的に記憶し、次の文章を読み進めるという流れが、内容を「理解する」ための第一歩といえそうです。
たとえば、私たちが料理をするとき、いま作業中の手順を頭の中にメモしながら次の手順に移り、その手順をメモしながら、またさらに次の手順…と、この作業を繰り返して料理を完成させます。
脳科学では、この「頭の中のメモ」を活用する働きを、「ワーキングメモリ」(作業記憶)という考え方を使って説明します。
「ワーキングメモリ」とは、情報の記憶と処理を同時に行う脳の機能で、たとえるなら「脳の中のメモ帳」のようなもの。この機能をうまく活用することによって、私たちは複雑な思考や行動を行うことができます。
しかし、「ワーキングメモリ」の容量が少なく、頭の中のメモが数ページしかない状態では、たくさんの情報を入れても、記憶に残すことができません。たくさんのメモを取れるようにすること、つまり、「ワーキングメモリ」の容量が大きければ大きいほど、効率よく情報を整理することができます。