鳥越:最初そんなことは誰もわからなかった。それは僕の直感で、山路君と一緒に取材をしていくなかでわかったことだったんです。

みなさんも生活の中でひらめきとか、直感とかあるでしょ? それを大事にしていただきたいなと思います。

たとえば料理人の世界では、彼らが味付けをするとき、調味料なんかは目分量です。いちいち量ったりしない。それでいて一定の味が保たれる。それはまさに、直感、ひらめきの世界です。

金属を微細に削る旋盤工の世界も、最後は手触りだそうですね。これも直感の世界です。1+1=2という論理の世界じゃない。そういうものは皆さんの生活や仕事のなかにも多いと思うんです。それを大事にするにはどうすればいいかということですよね。

人間は学校で、努力しなさいとか、筋道を追って考えなさいとか、そういう教育されてんですよ。ぼくは努力もしなかったし、筋道とか、考えなかったですよ。努力するの嫌いだったから。

山路:そうですねえ努力しない、いやあの(笑)、筋道がね。

鳥越:筋道考えるの、もう面倒くさい。だけどなぜか、僕の頭の中に筋道を全部とばして、ポンッと、こうじゃないかっていうひらめきが飛び出してくる。これを大事にしようと思って僕は仕事をしてきました。

山路:だからその、ひらめいたときは周りが大変なんですよね(笑)。「おお、鳥越さんひらめいちゃったよ!」ってなって。

大手メディアは空気を読んでいる

司会:時間もなくなってきました。その大変だったお話を最後にぜひ。

山路:桶川の事件もそうですけど、警察担当なんかがね、「鳥越さんなにやってんのかな、なに考えてんだろうな」って探りに来るわけですよ。警察から言われるから。「『ザ・スクープ』は次どんな放送するんだ、これ以上やられたら警察はもたない!」って。そういう記者のメモがわれわれのところに上がってくるわけですよ。鳥越さんそれを見て目を輝かして「よーし、もうひと押しだ!」って、また報道するわけ。

でもそういうのってね、普通のサラリーマン的発想ではできないと思いますよ。いまの時代、コンプライアンス、コンプライアンスって言われて身動きが取れないような状況の中で、ひらめきを大切にするというのは至難の技だと思いますけどね。鳥越山路P1000485

鳥越:いまの社会でいえば、コンプライアンスだけじゃなくて、なんというか、大手メディアの上層部には現政権にたてつくようなことはやめとけ、という空気がある。

古賀茂明さんという人が「報道ステーション」で揉めましたね。あれもそういう空気と無関係じゃない。

メディアはそんな状況なんだけど、一方で世の中はどうなっているかというと、安倍さんの支持率は下がってる。安保法制も60%が反対。でもメディアは、政権に対し強く出られない。現場は違いますよ、現場はやりたいんです。だけど、上の方がうんと言ってくれない。

こういうことが、山路君の言うコンプライアンスというものと微妙に混じりあって、なんとなくここから先は踏み込めない、ここまでだな、というのがいまの世の中にある。それが僕は気に食わない。

だけど僕はもうどこの番組にも出してもらえないんです。こういう人間ですから。

山路:そうですよねえ、いま(笑)。いや、笑い話でも冗談でもなく、鳥越さんのような存在って、僕も30年ぐらいテレビの世界で仕事してますけど、まあ、ありえないって話ですよね。

安倍さんの話だけじゃなくて、警察なんかにもメディアって弱いというか神経質になりますからね。警察の持っている力って大変なもんですから。そこをヘタ踏んだら、ホントに潰されるっていう状況がある。

桶川の時も、どこまで鳥越さん闘っていくのかなって近くで見てましたけど、結局勝ったから良かったけど、中途半端に負けたらそこで「終わって」ましたもんね。

鳥越:僕ら車で桶川とか上尾まで行ってたんですよね。僕が運転することも彼が運転することもあったけど、埼玉県内でだけは絶対に事故は起こさない(笑)、スピード違反もやらないって思ってた。捕まったら最後、僕ら何されるかわからない、という気持ちがありましたね。

それ以降も、埼玉県警管内を走る時は非常に用心しながら走ってます(笑)。

山路:まあ、いろんなことやりましたからね。実際僕、警察に尾行されたことありましたから……。「スクープ」の取材で……。

鳥越:残念ながら放送できていない取材もある。

でも、あきらめたわけじゃない。いずれやりたいんだけど、さっき言ったようにどこも呼んでくれないからね(笑)、その後やるチャンスがないまま、いまに至ってるということです。

司会:それはどんな取材でしょう?

山路:それを話すと何が起きるかわからないから(笑)、ここから先はオフレコで。

司会:では、ここで終了ということにさせていただきます!

(会場拍手)