山路:つまり警察は、被害者の訴えをさんざん聞いていたのにそれを放置して、事件が起きてしまった。それを警察は隠蔽したいわけですね。それで記者会見なんかを開いたときに、ちらっちらっと、事件とは全然関係のない、被害者のイメージを悪くしていくような情報を、半ばねつ造してリークしてたということもあるんですよ。

鳥越×山路2 P1000482鳥越:ああ、エルメスのバッグ持ってたとか。

山路:あと風俗で働いてたとかね。いろんなこと。

それで鳥越さんが疑問を抱いて取材を始めることになって、それらのウラ取りをやっていくと、みんな根拠がないんですね。

で、なんでこんな報道がされたのかというと、結局、警察がリークした情報を、新聞社の埼玉県警の担当者がパーって書いているだけなんですよ。

いちばんひどかったのが、事件が起こったあとに、被害者のお父さんが菓子折りを持って埼玉県警を訪れて、深々とお礼をしていったという……。

鳥越:某新聞ね。◯◯新聞。

山路:そう(笑)。

筆ペンで書いた大きな字の手紙が突破口に

山路:でも、それをお父さんに取材したらそういう事実は一切ない、ということがわかって。でも当時は娘さんを殺され、マスコミからもガンガンやられて、お父さんもお母さんも本当に口を閉ざしていて、一切マスコミと会おうとしなかったんです。だからご家族の取材をするというのは、あの時大変なことだったんです。

鳥越:大変だった。僕らもどこから手を付けていいのかわからないしね。電話番号も住所もわからない。

山路:でも調べて、鳥越さんに報告したら、電話なんかで話そうとすること自体が間違いだと。埼玉なんだし、これから行こうって言って。それから一緒に毎日、桶川通いですよ。毎日お父さんが帰る時間帯にね、我々の業界用語でいう夜討ちみたいなね…。

鳥越:違うよそれ、順序が。最初に手紙を書いたんだよ。

山路:いやそれ、鳥越さんが忘れてるんです(笑)。最初に行って、それで結局、やっぱり相手してもらえなくて、それで、よしっ、てんで手紙書いたんですよ。

鳥越:ああ、そうか。

山路:もうそろそろね、75才なんで。

鳥越:後期高齢者ですから。

山路:(笑)。この間役所からね、でかい保険証が届いたんですよね。

鳥越:そうそう(笑)。

山路:(笑)。まあ、そんなことがあって。それで、鳥越さんが筆で手紙書いたんですよ。それを届けてね……。

鳥越:大宮の駅前の、担当弁護士の事務所に送って、届けてもらった。最終的にはお父さんが、じゃあ、会ってもいいですよ、ということになって、弁護士事務所で会うことになった。ただしカメラはダメ、話を聞くだけということで会ったんですけど、その時お父さんが言ったのは、取材申し込みの手紙はもう、たくさん来てると。でもみんなワープロで書いてるかボールペンで書いてるか。その中で筆ペンで書いてあって、こんな大きな字で、まあ僕の字はすごく大きいから……。

山路:大きいからね、手紙なんてすぐ20枚ぐらいになっちゃうんですよ(笑)。

鳥越:ちょっとした短い文章でもいっぱいになっちゃう。だからそれで存在感が……。

山路:いやこれね、余計な話かもしれませんけどね、あとでお父さんに話聞いたら、なんて書いてあるかわからなかったという(笑)。

鳥越:そうかもしれない(笑)。まあそれで、弁護士事務所でいっぱい手紙がある中からいちばん目立つものを選んで、話だけ聞きましょう、ということになったんです。