2015年8月19日、鳥越俊太郎氏の最新刊『君は人生を戦い抜く覚悟ができているか?』(日本実業出版社)の刊行を記念して、ジャーナリストの山路徹氏をゲストに迎えてトークショーが行なわれました。
異能のジャーナリスト2人を結びつけた事件の詳細を皮切りに、「直感」の重要性、大手メディアの限界まで話が拡がって……。
警察の隠蔽工作を暴いた「ザ・スクープ」での闘い
司会:本日は、鳥越俊太郎さんの新刊『君は人生を戦い抜く覚悟ができているか?』の刊行記念ということで、お相手に山路徹さんをお招きして、対談形式でお話ししていただきたいと思います。
なぜ鳥越さんと山路徹さんなのか。少しだけ説明させていただきますと、お二人は「ザ・スクープ」というテレビ朝日の調査報道番組で、鳥越さんがキャスター、山路さんがスタッフとして長年一緒に仕事をされていた間柄ということで、その時の仕事のお話などがうかがえれば、ということでお越しいただきました。
それでは、よろしくお願いします。
山路徹(以下、山路):どうぞよろしくお願いします。
鳥越俊太郎(以下、鳥越):みなさん、なんで山路君かと、不思議に思われるでしょうね。最近はいろいろあって、バラエティ番組へ呼ばれたりしてるから(笑)。
まあいろいろわけあって、そういうふうになっちゃっているけど、もとはというと山路君は、戦場から報道するような真面目な、というといまは真面目じゃないみたいだけど(笑)、報道番組のディレクターをやってました。
彼とはいろんなエピソードがあるんですけど、僕が一番覚えているのは、桶川のストーカー殺人事件での仕事です。
事件は1999年の10月に発生したんですが、そのとき、週刊誌などが殺された女性のことをいろいろ書きたてたわけです。派手なブランド物を持っているとか風俗に勤めたことがあるとか。全部ウソなんですけどね。女性誌も含めて盛り上がっちゃって、被害者の印象が、なんか殺されてもしょうがない、というふうになってたんです。
そのときに、僕はそれを見ていて、最初はまあそうかなと考えていたんですけど、途中からおかしいな、警察はちゃんと捜査していないんじゃないかと思いはじめて、取材することにした。で、私の番組で企画書を出しました。
「ザ・スクープ」にはプロデューサー、ディレクターが20人くらいいるんですけど、一回目に出したときは、だれも見向きもしない。二回目もだめ。それでもあきらめずに三回目に「今度はいうこと聞いてくれ」と言って出したら、プロデューサーが「まあ鳥越さんがそこまでいうならやるだけやってみようかと」と、半信半疑ながらも了解して、ようやく取材することになったんです。
でも、番組の中にいるディレクターが誰も手を挙げなかった。そんな企画やってもしょうがないということで。それでプロデューサーが困って、じゃあ、今回は警察に詳しいこいつを付けますよといって指名したのが、番組のレギュラーのディレクターではなくて、外部のプロダクションの代表である山路君だったんです。前から知り合いではあったんですが、そんなきっかけで一緒に仕事をすることになった。
それで、その取材の結果が、翌年、2000年の5月にストーカー規制法が国会で成立することにつながって、2001年に僕は、その番組をやったおかげで、日本記者クラブ賞という大変名誉ある賞をいただくことになった。彼と深いつながりができたのはその時から、という関係です。
ほかになんか言うことある?
山路:いや、言うことというか(笑)…。
当時は警察がですね、被害者のご家族が、ストーカー被害を再三訴えていたのにもかかわらず潰していたんです、すべて。で、殺されたあとに、「大変なことになった」と。