一番代表的な分割方法となるのが「現物分割」で、文字通りそのままの状態で分割するということです。しかし、合わせて相続する金融資産などがなく純粋に「親の家だけ」が遺された場合は、分割しづらいため共有資産にされることがほとんどです。詳しくは後述しますが、一度は共有資産として扱われたものの、結局誰も住まずに空き家として放置されるケースも少なくありません。

次が換価分割。換価とは「不動産を売って、均等に分けやすい現金にすること」で、浦田氏が関わってきたケースでもこれが多いとのこと。ただし、残された家族の中で住むことを希望した人がいる場合は、すんなり事が運ばないこともあります。

最後が代償分割。多く相続した人が、相続額の少ない人に対して一定の金額を渡すことで公平を期すやり方です。ただし、代償金額をいくらにするかで諍いになったり、そもそもその代償額を捻出することが難しい、介護などで面倒を見ていた人とそうでない人がいた場合でどう差をつけるかなど、複雑な問題も絡んできます。

このように、分割方法にはそれぞれ一長一短があります。こうした状況を考慮し、浦田氏は「親が生命保険を使って解決する方法もある」と提案しています。

親は生前に、自分を被保険者として生命保険に加入し、あらかじめ実家を相続する予定の子を受取人としておくのもいいだろう。死亡保険金は受取人の固有財産となり遺産分割の対象財産にはならない。したがって、家を相続した子はその保険金を代償金に充てることができる。

(『不動産のプロが教える究極の相続対策』p.229より)

親の家、空き家になれば金食い虫

さて、相続と家にまつわるもう一つの問題があります。それが「空き家問題」です。

 総務省統計局が5年ごとに発表している「住宅・土地統計調査」によると、総住宅数6063万戸に対して空き家は820万戸、割合にして13.5%という過去最高の数字を記録しています(総務省統計局「平成25年住宅・土地統計調査結果」結果の概要より)

国ではこうした状況を踏まえ「空家等対策の推進に関する特別措置法(空き家対策特別措置法)」を2015年2月に施行。行政から「無管理状態」と認定された空き家は住宅用地としての特例から除外され、固定資産税が6倍になったり、最悪の場合行政代執行により解体され、その費用が行政から家主に請求されることもあり得ます。

では、地方にある家や、都心部にあるけど家屋の老朽化が著しいために

  • 居住者が現れる見込みがない
  • 売るとしても投げ売りのような値段しかつかない
  • メンテナンスや解体にかかる費用ももったいない
  • かといって放置もできない

こうした家はどうすればいいのか、浦田氏は次の6つの方法を提案しています。

  1. タダ同然で貸し出す
  2. リフォームして相場の家賃で貸す
  3. 売ったお金を頭金にして不動産投資をする
  4. 相続した家を担保にお金を借りて、都心に中古の区分マンションを買う
  5. 家を貸す場合はマイホーム借り上げ制度を使う
  6. 新築戸建を建てて売却する

(p.231-234より)

各項目の詳しい説明については本書に譲りますが、ここでは「5.家を貸す場合はマイホーム借り上げ制度を使う」について簡単に触れてみます。

マイホーム借り上げ制度とは?

社団法人「移住・住みかえ支援機構」(JTI)が実施している制度で、簡単に言うと「高齢者の住宅を子育て世代等に貸すことで、空き家の活性化を図る試み」となります。浦田氏の解説によると、以下のようになります。