推定した原因をもとに、対応を考えてみる
原因が推定できたら、そのうえで、対応を考えます。
まず、上記のうち後続事象(C)を変えるという選択肢があります。
「先月の営業成績に対する発言を求められ(A)」
→「発言すると(B)」
→「上司が笑顔で話を聞いてくれる(C)」
これなら、発言をしても上司は笑顔で話を聞いてくれると部下は感じ、会議の席では上を向き、人の顔を見て話すようになる可能性があります。
しかし、多くの人は、成績が悪いという報告を笑顔で聞くなんて不自然だし、できないと考えるでしょう。その場合は別の対処法を考えてみます。
たとえば、ここで挙げた「標的行動(B)」自体が適切なものなのか、それを変えることでうまくいく方法がないのか、考えてみましょう。
つまり、会議の場で発言させることが難しいようであれば、「営業成績や売上についての説得力のある資料を事前に作らせ、会議で配付し参加者に伝える」ことを標的行動に設定してみることが考えられます。
「発言」を「資料作成」に置き換えるという逆転の発想ですが、X君に、自分の意思を周りに伝えさせるという目的にはかないます。
たとえ会議中はなかなか発言できないとしても、資料で、自分自身が考える営業成績に対する現状と原因、打開策を相手にわかりやすく伝える。そうすれば上司や周りの人は、それを理解したうえで「取引先に持参する資料を変えてみれば」「別の担当者に話しかけてみれば」などと、具体的に指導することができます。
部下の方も、怒られるかとビクビクせずに会議に出席できるので、双方とも望ましい結果になるでしょう。
このように、行動分析学の考え方を職場で実践することで、あなたにも部下にもプラスの影響を及ぼすようなマネジメント手法を模索することができます。部下指導でお困りの方はもちろん、これから人を動かす立場になる方には、今回の内容がさらに詳しく記された『リーダーのための行動分析学入門』(島宗理:著)がおすすめです。
効果的な部下指導の手法について、学んでみてはいかがでしょう。