「なんでこの人は、こんなことを?」と、相手の行動に不満をもつことがあるはずです。
そんな時に使えるのが「行動分析学」です。
行動分析学とは、「人がなぜそのように行動するのか」ということについて、その人がそのように行動する原因を、その行動を変えながら見つけようと探究する、心理学の一分野です。……なんて、書かれてもよくわからないですよね。
しかし実は、私たちの職場でもマネジメント手法として使うことができる便利なものなのです。
行動には理由がある
自分の部下とどう接すればいいのか、部下との接し方は、リーダーや管理職の共通の悩みです。つい、昔の自分を思い出しながら、「最近の若者は…」「ゆとり世代だからな」「あいつは年上との関わり方も知らないのか?」などと、部下の行動に対して日々首をかしげてしまいます。
でもそれは、本当に部下の性格や能力のせいなのでしょうか?
「あの先輩、仕事の仕方について話すとすぐ不機嫌になる」「指示された通りにやっているのにいつも怒られる」など、部下は部下で上司に不満をもっているケースもよく見られます。
部下には部下なりの、行動の理由があるのです。
たとえば、部下についての次のような悩みを例に、どういった対応をとればいいのか、考えてみましょう。
まずは相手の状態を分析する
あなたは、売上が伸び悩んでいる、商社の営業部門の統括者です。
新人営業部員のX君。売上報告の会議中に、ずっと下を向いたままで、発言しません。
あなたが「なにか意見はないか」と聞いてみても、小さな声で下を向いてボソボソと話すだけ。
「聞こえないぞ」と注意をしても、その時は少し大きな声で話し始めますが、すぐに元にもどります。
こういった場面で「あいつは積極性に欠けるな」「困ったものだ」と、単純に評価を下してあきらめてしまっては、問題は解決しません。
まずは、なぜそうなったのか、原因を考えてみることが重要です。たとえばX君はこの時、以下のような状態になっているかもしれません。
「先月の営業成績に対する発言を求められ(A:先行事象)」
→「発言すると(B:標的行動)」
→「上司にどうなっているんだと怖い顔で返答される(C:後続事象)」
(行動分析学では、(A)を先行事象、(B)を標的行動、(C)を後続事象と呼びます。)
このように分けて考えると、X君は上司の「怖い顔」を見たくないために、下を向いたまま、話しているのではないか? 自分の先月の営業成績に自信がないため、ボソボソと自信のない話し方になってしまうのではないか? というように、部下がとる行動の原因を推定することができます。