人工知能に負けない働き方、生き方とは?
では、そんな人工知能を相手に、私たちはどうすればいいのでしょうか。人工知能の強い部分に対抗するのは無意味だとすれば、人工知能の得意分野は人工知能に任せて、私たちは人工知能の弱い部分、不得意な部分で勝負すればいいと茂木先生はアドバイスします。
そのためには、人工知能が苦手とする、私たちが人間らしさを発揮できるスキルを磨けばいいわけです。具体的に、茂木先生は次の5つのスキルを挙げています。この5つのスキルを鍛えることこそが、いわば人工知能時代を生き抜くための武器となるわけです。
- コミュニケーション
- 身体性
- 発想・アイデア
- 直感・センス
- イノベーション
人間らしいスキルを磨き、同時に人工知能をうまく利用する──。
そのためには、前提として私たちも考え方やものの見方を従来とは変えていかなければなりません。それは、「脳の使い方を変えていく」「新たな脳をつくる」ということに他なりません。
たとえば、人工知能時代には、権威主義は通用しません。なぜなら、人工知能は膨大なデータベースを瞬時に分析してリアルタイムに客観的な評価を下すことができるからです。過去の成功体験やレッテルのようなものは、すぐに人工知能に見透かされてしまうのです。
また、人工知能のサポートがあれば、面倒なことを覚えたり、メモをとったりする必要もなくなります。現在でもスマホがあれば、知らない場所でもたどり着くことができます。表現は悪いですが、「いいかげん」で「ちゃらんぽらん」な生き方が許容されるのです。
つまり、人工知能が私たちを「自由」にしてくれる。茂木先生によれば、「空気がないと窒息してしまうように、自由がないと脳はちゃんと働かない」とのこと。つまり、人工知能の存在が私たちの脳を活性化し、ひいては私たちをもっと成長させてくれるのです。
* * * * *
人工知能の登場によって、私たちは「人間としての価値はどこにあるのか?」「人間らしさとは何か?」という問題と向き合うことになります。その意味では、同書は著者による、人間の(脳の)無限の可能性に期待した、未来への提言だといえるかもしれません。