新しい製品が開発され、それが市場を席巻すると、「イノベーティブな発明」などともてはやされます。このようなことから、イノベーションという言葉は、日本語では「技術革新」と訳されがちです。

しかし、技術革新はイノベーションのあくまで一側面でしかなく、実際には「これまで世の中になかったものを初めて生み出す」活動全般を指します。

『最強のイノベーション理論 集中講義』(安部徹也/著)はそのようなイノベーション理論を、シュンペーター、ドラッカー、クリステンセン、キム&モボルニュ、ゴビンダラジャンという、この理論の第一人者たちが講義するという形で、分かりやすく読者に解説した一冊。

ここでは、その最初に登場するシュンペーターの(架空の)講義「イノベーションとは何か?」のなかから、イノベーションの性質と、それを生み出すための条件を見ていきましょう。

イノベーションは「非連続」なもの

イノベーションはその性質上、顧客の声をよく聞いて成し遂げられるものではありません。人々が普通の生活をしている限りでは全く思いつかないことを考え出し、それを世に送り出すことこそがイノベーションなのです。

たとえば、AppleのiPad。スマートフォンのような利便性とノートパソコンの機能性を兼ね備えた製品ですが、これらの商品の代替品として開発されたものではなく、全く新しい製品として市場に投入され、消費者に受け入れられました。

このような、従来の製品やサービスを改善する活動ではない「非連続」性は、イノベーションにとって重要な条件です。

イノベーションの重要性

まだ馬車が主流であった時代に、それをどんなに改良しても、自動車や鉄道、飛行機といった発明品は生まれなかったでしょう。蒸気のエネルギーを動力に活かす、というイノベーションがあってはじめて、現在のような世界各地に移動できるさまざまな交通手段が整えられたのです。このような発明は、人々の行動範囲を劇的に広げることに寄与し、生活環境を大きく変えることにつながりました。

つまりイノベーションは、社会や経済の発展に寄与するものなのです。

また企業にとっては、イノベーションを起こすことで、他社との既存のパイの奪い合いに終始していた状況から脱し、全く新しい市場を開拓することができるようになります。

イノベーションを起こせる分野とは?

では、どのようなところで、イノベーションは起こせるのでしょうか。次の5つの分野があげられます。