たとえば部下に話をしたとき、「わかりました!」という返事がいいからといって、「よし、伝わったな」と考えないほうがいいですね。特に体育会出身者は、返事だけはいいですから、注意したほうがいい(笑)。

部下に対して話をしたあとに、「いまの話わかった? わかったなら説明してくれる?」などと質問して、確認してください。確認を通じて共通のイメージを浸透させていくことが大切です。

 本物のコミュニケーションを生むのは「対話」

強いチームには、「対話」があります。「対話」は、ただの「会話」とは違います。辞書によれば、両方とも「向かい合って話し合うこと」とありますが、英語で言えば「会話」は conversation 、「対話」は dialogue で、意味が違うんです。英語でいう「対話」は、「違うものをすり合わせて同じものにする」といった意味です。

私たちは会社やチームの中で、コミュニケーションを取ろうとして様々に話し合いますが、「会話」するだけだったらそれは仲間内の、仲のいい間柄での話でしかない。本当は、考え方の違う人たちと話しをして、意見をすり合わせて最終的に同じ方向を向くように努力をしなければならない。これが「対話」なんです。

また、「対話」をするときに重要なのが「夢」です。皆さんは、夢を持っていたとしても、それを人に言うと馬鹿にされるとか、親から否定されるだろうとか思ったことはありませんか。

「おまえにできるわけないじゃないか」「おまえにできるんなら世界中の誰にだってできる」なんて言われるんじゃないかと思ってしまうと、だんだん自分の夢を語らなくなりますよね。そうするとその夢は、ほかの誰も理解しない「儚く」て、実現しないものになってしまうでしょう。

もし夢があったら、たとえそれがいまの自分とかけ離れていたとしても、口に出して言わないと現実になりません。夢は抱え込まないで、周囲に話すものです。そうすれば「儚い」から「にんべん」が取れて、みんなの「夢」になります。

イチロー選手が子どもの頃に書いた作文の話は有名ですね。彼の夢が実現したのは、その夢を作文で語ったからではないでしょうか。親がそれを信じて練習を手伝ったりして、いつしかイチローの夢が鈴木家の夢になった。そしてそれが大きく広がって、いまや多くの日本人やメジャーリーグファンの夢になったんです。