反対に弱いチームは、だらだらと集まって円陣も乱れています。その円陣の後ろのほうでは「あのサインプレーなんだっけ」などと、こそこそ話をしていて、まとまりがない。

ただし、おわかりかと思いますが、小さい円陣を意図的に作っただけで強くなるわけではありません。どうすれば自然に小さくてきれいな円陣ができるのか。そこが大事なんですね。

コミュニケーションが「チームをひとつ」にする

ところで皆さんのなかで、自分の会社の経営理念、ミッションをすぐに言える方はいらっしゃいますか?

(ほとんど手が上がらない)

会社の理念とか、あなたの会社の「らしさ」ってどういうものですか? と質問をされて、それを3秒以内に答えられないと、その人がいる会社の「らしさ」や特徴が、社員に浸透していないな、と判断できます。そういう組織は強いとは言えない。

ラグビーでもそうなんです。たとえば、早稲田らしさってなんですか? とかサントリーらしさってなんですか? と聞かれた時に、監督と選手の言っていることが違うチームはなかなか勝てないですね。「らしさ」っていうのは、戦い方の指標であり、方法なんです。それをチームのメンバーが理解していなければ強いチームにはなりません。

私がサントリーにいたときは、早稲田大、明治大、青山学院大、日体大出身の選手たちでバックスを構成していました。ある練習試合で、ラグビーではよく使われる、ある基本的なサインプレーにおける選手の細かい動き方が、出身チームによって微妙に違っていることがわかりました。それが原因になって連携が少しずつズレてしまい、スムーズにボールがつながらない。

そこで話し合って、自分たちが使うサインプレーと選手の動きについて洗いざらいお互いに確認して、それぞれのプレーの目的、方法を共有する作業を行いました。その結果、前の年に負けていた神戸製鋼という強豪チームに勝つことができた。

その時私たちがやったのは、「わかったつもり」をやめて、話し合いによって共通したイメージを作りあげることでした。これがコミュニケ―ションなんです。

『勝ちグセ。「最強のチーム」をつくる50の絶対法則』
『勝ちグセ。「最強のチーム」をつくる50の絶対法則』

communication という英単語の接頭語は co で「共通のものにする」「シェアする」という意味ですが、単に言葉で意思の疎通ができているからといって、コミュニケーションがとれていると考えるのは危険です。

必要なのは、「なんのために」われわれはこういうプレーをするのか、こういう仕事をするのかというイメージをシェアすることなんです。それが無ければ、コミュニケーションが取れているとは言えません。

私たちが他人と話し合いをするなかで、自分が伝えたと思っていることが、実際には正しく伝わってなかったりするのはよくあることです。「わかったつもり」がいちばん怖い。それを防ぐためには、どう伝わっているか、ということを常に確認すべきなんです。