「○○はただいま席を空けております。社内におりますので折り返しお電話させていただきます」との返事からかれこれ1時間、それなりに急ぎで複雑な要件だから電話したのに、とイライラ。でも次の日には一転、午前中に自分から折り返すべき電話をうっかり忘れて、夕方に平謝りする。ビジネスパーソンのありふれた日常です。

しかし、考えてみるとわたしたちは、電話を待っている時間は永遠のごとく長く感じますが、都合のいいことに、待たせている時間の長さはあまり気にしないような……。

このギャップは、トラブルの種かもしれません。


 「少々お待ちください」は10秒か、1分か

テレコミュニケーションビジネスの専門家で、『相手の心をしっかりつかむ プロフェッショナル電話力 話し方・聞き方講座』の著者、恩田昭子氏によれば、電話を待つ側と待たされる側の時間感覚の差は、6倍にもなるそうです。

たとえば、多くの人の感覚では、電話で相手に「少々お待ちください」と伝えたあと、10秒ぐらいなら、相手を待たせることにあまり抵抗を感じないでしょう。しかし、立場が変わって待たされる側だとしたらどうでしょう。10秒待たされたらイライラしはじめませんか? 1分を超えようものなら怒り心頭、嫌味のひとつも言いたくなるに違いありません。なぜか?

その理由を恩田氏はこう説明します。

「たかが1分」と思うかもしれませんが、待つ側の人は実際の3倍ぐらいの時間を待たされたと感じるそうです。しかも、待たせる側は2分の1くらいにしか感じないというのです。つまり、待つ側と待たせる側の時間感覚の差は、およそ6倍にもなります。(15ページ)

そうだとすれば、ビジネスにおける電話応対シーンには、つねに時間感覚の違いによるトラブル勃発の可能性があることになります。お互いのイライラを避けるためには、時間感覚にシビアになっていたほうが良さそうですね。

「折り返しお電話を差し上げます」に待てる時間は

では、「折り返しお電話を差し上げます」のあとの電話は、何分後、何時間後までにかけるべきでしょうか。「10分まで!」「いや最長2時間までなら大丈夫」と答えは様々でしょう。人それぞれに自分だけの感覚的なルールがあって、上述の「待つ」「待たされる」という立場の違いもあるのだから当然です。

しかし、それをそのままにしておいたら、電話応対でストレスを感じる人が増えるだけです。誰もが納得する基準はないのでしょうか。

“「折り返し」は遅くとも5分以内。これがプロの現場の常識です。”と恩田氏(16ページ)。

「5分? 短いな……」と感じる人のほうが多いのではないでしょうか。それはおそらく、待たされる側から考えていないからでしょう。電話応対では、相手のことをまず第一に考えて、相手の要求に素早く応えることが重要です。そのためには、待たされる側の時間の感覚を、十分に意識して対応すべきでしょう。

次のページに、電話応対のプロが考える時間の基準をまとめました。「意外!」と感じた人は、考え方を少し変えることをおすすめします。

┃次のページ┃「しばらくお待ちください」「のちほど」は何分?