以前いた高校では普通科と商業科が別校舎で、距離的にも少し離れていました。道1本あるだけで全然の別の雰囲気になるんですね。まったくコミュニケーションがありませんでした。わたしは普通科の責任者で、そこで再生のための改革をやりましたが、商業科からはなかなか理解を得られませんでした。企業でも部署間で壁があるでしょう?

──あります。通路1本違うだけで心理的な壁ができてしまったり。

別の学校では、高校と短大の間に細い川が流れていました。もちろん橋で行き来できるんですが、考え方がまるっきり違っちゃっていたんです。そこで、人の入れ替えを非常に短い期間でやりました。お互いの考え方をわからせるために。そうしたら、それぞれが「間違っていたかもしれない」と思いはじめ、ベクトルが揃ってきました。企業でも、人事交流にはそうした効果が期待できます。

──短い期間で異動して、仕事の継続性に問題はなかったんでしょうか。

それぞれがつくっていたテリトリーをとにかく壊したかったので、そこを優先しました。机にファイルを高く積んで、まわりとの交流を拒んでいた人もいましたがそれも禁止(笑)。孤立して働いても楽しくないですからね。風通しを良くしないと。

抱え込まずに仲間に頼ろう

──最後に、読者へのメッセージをお願いします。

先ほども言ったように、中間管理職の方がよく相談に来られます。くじけかけている人が本当に多いです。苦しいと思いますが、まずは、最初にお話しした「この仕事を選んだ理由」に立ち返ってみてほしいと思います。

それから、ひとりで抱え込まないこと。仲間がいますから。誰もが何もかも完璧にできるわけじゃない。仲間に頼ってください。私は部下も含めてみんなによく頼ります。頼られたほうもうれしいんです。

社長さんにも頼ってみてください。社長は孤独だから、信頼されて頼られたら喜びますよ。

──女子教育のエキスパートとして、働く女性に対してもひと言いただけますか?

女性が活躍できる世の中に、ということがさかんに言われていますが、実は女性の側が、家庭との両立が難しいことを理由にリーダーになることを躊躇している側面があります。しかし私は、それでは社会が行き詰まってしまうと思んです。

家庭のマネジメントも会社のマネジメントも、それぞれの心を通わせてベクトルを揃えて、一緒にやっていくという点では同じです。家庭を仕切っている女性たちに、マネジメントができないはずはありません。実際に上手に両立させている人も多くて、話を聞くと、家庭でも会社でも同じことをやっているとおっしゃいます。

どうか女性の皆さんも積極的に管理職になって、会社と、会社の男性たちを引っ張っていってほしいですね。


 長野雅弘(ながの まさひろ)
1956年名古屋市生まれ。南山大学外国語学部卒業後、教育の現場に携わる。数校の校長職を経て、現在、聖徳大学附属取手聖徳女子中学校・高等学校校長。聖徳大学児童学部教授。現職では、教育課程特例校指定を受け、「女子教育特別プログラム」を実践している女子教育のエキスパートとして知られる。
また4つの学校を再建した独自のメソッドを持っており、その学校再建術は一般の企業からも注目されている。船井総合研究所をはじめとして講演依頼が多数寄せられ、実際に多くの有名企業の経営再建に協力している。『驚異の復習継続法』(パンローリング)、『「勉強ができない」と思い込んでいる女の子とお母さんへ』(学研教育出版)など、著書多数。