会社から新しいパソコンが支給された時のこと。ボスは使い勝手がいいように設定しようとしていましたが、行き詰まった様子でした。著者は「IT担当者を呼びますか?」と声をかけましたが、ボスはそれを制して、若いスタッフのところに近づいて行きこう言いました。
「君、今時間はあるか? 忙しいところすまない。たしか君はコンピュータが得意だったね? どうしてもわからないことがあるので、君に教えてもらいたいんだよ。いいかい?」(64ページ)
この若いスタッフは、声をかけられたとき真っ先に「クビになる!」と思ったそうですが、その後の言葉を聞いて別の意味で驚きました。そして、彼の説明に納得したボスに感謝されると、近寄りがたかったボスに親近感をおぼえ、尊敬の念が強くなったそうです。
普通の人は、役職が上がれば上がるほど、自分が「知らないこと」を認めなくなります。「部下に教えてもらうなんてみっともない、バカにされるのがオチだ」と考え、知らないままにしてしまうのです。
できるエグゼクティブは違います。「彼らは知らないことを恐れない」と著者は言います。なんでも知っている完璧な上司などいません。知らないことを堂々と認め、部下にも教えを請う。自分の知識が広がると同時に、部下とのコミュニケーションもとれ関係が向上します。
できるエグゼクティブは、無知や間違いも潔く認めて、自身の向上のきっかけにするのです。
「ここは日本だから」といっていては、グローバル・ビジネスの世界では通用しません。日本人ならではの特質に、外資系エグゼクティブたちのような強い自信と合理性、柔軟性をプラスすればもっと良くなる。本書にはそんなメッセージが込められています。