『どの会社でも結果を出す「外資系エグゼクティブ」の働き方』の著者であるフラナガン裕美子氏は、5つの外資系と日系の大手金融機関で、8カ国のエグゼクティブたちを秘書としてサポートしてきました。
その中には、20人以上の秘書を連続してクビにするなど仕事に対して非常に厳しくありながらも、周囲からの畏怖と尊敬を集めた「モンスター上司」も珍しくなかったそうです。そんなエグゼクティブたちとのエピソードをもとに、リーダーの心得をまとめたのが本書です。
著者は、普通の日本企業では得がたいその経験から、日本人ビジネスパーソンの勤勉さや実直さにあらためて感じ入ると同時に、変化へのフレキシブルな対応力や合理的思考など、まだまだ世界基準から学ぶべきことも多いといいます。
今回は、本書で紹介されている、著者が仕えてきたエグゼクティブたちの3つのエピソードを通して、グローバル化がどんどん進む激しい競争社会を生き抜く、できる上司たちの「世界基準のリーダーシップ」の一端に触れてみましょう。
仕事に対する絶対的な自信と誇り、感謝の気持ちを持つ
冒頭の、20人以上の秘書をクビにしたのは、あるイギリス人のボスです。本書に登場する猛者たちなかでも「最強のモンスター」と称される彼のもとでの仕事は、経験したことのない過酷な日々だったそうです。
「満席でチケットが取れないというのは君の問題だろう。私にはいっさい関係ない。君に給料を支払う理由はただひとつ、私の望みをすべて叶えることだ。どうにかしろ!」(13ページ)
部下への要求は一見理不尽なほどに高く、妥協は一切なし。しかし彼は周囲から畏怖され、憧れの対象でもありました。それは毎日誰よりも早く出社したり、どんなに出張や会合が続いたとしても常にバリッとしたスーツをさわやかに着こなし、どんな場でも堂々と振る舞うといった仕事振りを、周囲が見ているからです。また、部下にも同じレベルを求めていますが、彼が仕事に誰よりも全力で取り組んでいることをわかっているので、部下も受け入れざるを得ません。
口が悪く皮肉屋なこのボスはいわゆるエリートではなく、努力して上り詰めた苦労人だそうです。それゆえか、あまり表に本心を出すことはないものの、周囲への感謝の気持ちを知っている人物でした。
金融機関のIT関連部署のトップであるボスは、部下が「IT部署のスタッフだから」とディーラーなどから下に見られて敬意を払われていないと聞いたとき、部下たちを集めこう言いました。