経営戦略の2つの意義

企業経営における経営戦略の位置づけについてもう少し詳しく見ていきます。

先に経営戦略とは「目標を達成するための打ち手である」と述べましたが、この「目標」と「打ち手」の関連性を踏まえて企業経営の階層構造を図示すると、以下のようになります。

同書 14ページより


経営においては次の4つの概念が階層をなしています。

「基本理念」は企業の最終的な目標や行動規範を示し、「ビジョン」はその基本理念を具体化したものです。その下位の概念として「経営戦略」と「施策(戦術)」があります。

図のように、それぞれの概念はその上の階層の目標を達成するための打ち手であるといえます。すなわち経営戦略とは、基本理念やビジョンを達成するための打ち手なのです。またそれは、具体的な業務に落とし込んだ施策(戦術)によって、日々取り組まれるものです。

このような経営戦略の2つの意義について、同書では以下のようにまとめています。

1つ目は、「基本理念、ビジョンといった、中長期でのありたい姿を実現するための打ち手」であるということです。「思い」や「夢」を具体化するものだといえるでしょう。

一方、「日々の施策を遂行していく際の目標」であるともいえます。「現場」や「日常」の方向性を示すものであるといえるでしょう。

(同書18ページより)

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以上見てきたように、経営戦略は決して机上の空論ではなく、経営者の「思い」と「現場」をつなぐ、企業経営のカギと言える大切なものです。そのために多様なアプローチが存在し、また、学問の世界では新しい経営戦略の考え方が次々に提案されています。

しかし実際の経営においては、基本的な考え方とさまざまな戦略の特徴と限界を踏まえたうえで自社に合った戦略を採用することが、新しい戦略を試すことよりも重要なことです。

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