上4行はすべて「○○には水が入っている」と書かれています。ここまではすべて「水が入っている」という類似点を軸にしてまとめられているのですが、最後の行にはいきなり「酔っぱらう」という言葉がでてきて、さも上4行をまとめあげた結論のように書かれています。さらに詳しく解説すると下記のようになります。

帰納法では、「観察事項から、類似の点をまとめ上げたもの」が結論となります。この場合の結論としている「酔っ払う」という点は、類似の点をまとめ上げたものになっていません。

観察事項のどこにも酔っ払うという話がないのに、なぜか結論では酔っ払う話が出てきます。

話から何となく想像できること(酔っ払う)をあいまいなまま関連づけてしまっており、典型的な論理のすり替えのパターンになっています。

もし、この観察事項から、類似の点を拾うとすれば、「水が入っている」という部分です。ワインやビールや焼酎はいずれもアルコール飲料ですから、無理やり結論をつくるとすれば「アルコール飲料は水が含まれている」となるでしょう。

(『3分でわかるロジカル・シンキングの基本』P38より)

その2. 観察事項そのものがおかしい

「その2」のおかしな点は、そもそも観察事項自体に曖昧さがある(科学的根拠に乏しい、直接的なつながりのある理由づけがない etc.)ところです。

 血液型占いに科学的根拠がない(なぜか、それでも信じている人は大勢いますが……)のは自明のことです。これは、その3のおかしな点にもつながってくるのですが、たまたま例に挙げた3人が楽天的な性格をしていただけで、他のO型の人は悲観的かもしれません。

この例のように血液型による性格診断であればかわいいものですが、これが経済や医療・健康などにかかわる話になるとなぜか騙される人が増えるのも不思議なところです。そうした話は、聞いたときにすぐ飛びつくのではなく、「ちょっと待って。それ本当に正しいの?」と一度立ち止まって考えるクセをつけましょう。

 その3. サンプリングが不適切

前述の引用箇所にもある通り、帰納法は「観察事項から、類似の点をまとめる」ことで結論を導き出します。そのとき「ある集団の中のごく一部だけを採りあげて全体に当てはめる」といった、非常に偏ったサンプリング手法を用いると、おかしな結果になります。

今回の例だと、日本の若者の人口は数千万人いるのに対してサンプルはたったの3人。結論として言われているフリーター増大の正誤はともかく、3人のサンプルから日本国内全体の話に結論付けるのは性急にすぎます。

こうした手法は、テレビ番組の制作手法としてもよく使われるものです。また、テレビに限らずとも「こういう傾向がみられる」「●●が世間的に大流行!」のような情報に触れる際には、よくよく気を付ける必要があるでしょう。

“論理的な間違いに騙されない”ためのワンポイント

話を聞くときは、下記の3点に留意する。
  • 結論がいきなり出てきた話に飛んでいないか?
  • そもそも曖昧なもの・非科学的なものありきの話になっていないか?
  • ごく少数や偏った一部の事例が話のベースとなっていないか?

ロジカル・シンキングというと、「自分の意見を伝える」「わかりやすく発表する」など、自分が発信側に立つときのメリットが強調されがちですが、「人の話を聞く」「提案や発表されたことを検討する」といった受け手側に立ったときにも役立つものです。

本記事をきっかけに本当に論理的な考え方を身につけて、スムーズなコミュニケーションに役立ててみてください。