おそらく、誰もが一度は聞いたことがある「ロジカル・シンキング」。このノウハウをマスターすれば、スムーズなコミュニケーションや問題解決に役立ちますが、使い方を誤ると「論理的に見えるけど実はちぐはぐな考え方」に陥ったり、「一見論理的だけど、よく考えれば間違っている話」に騙されたりします。
ここでは、そんな「ロジカル・シンキングの誰もがハマりがちな落とし穴」について解説します。風が吹けば桶屋はホントに儲かる? ―正しい因果関係とは
ある原因を基にして結果を導くときの過程を説明するとき「AだからB→BだからCという結論が導き出せる」と展開するのが普通です。この場合、原因から結果までのステップ数が2~3程度であれば、それなりに説得力のある話として受け止めてもらえるでしょう。
しかし、「AだからB→……→WだからXという結論が導き出せる」などと言われたら、あなたはどう思いますか? 20数段階ものプロセスを経なければ説明できない話ではどう考えてもこじつけに聞こえるし、なにより途中で話を聞くのも飽きてきますよね。
この具体的な例が「風が吹けば桶屋が儲かる」ということわざです。ご存じの方も多いと思いますが、その「ロジック」は、概ね下記のような流れになっています。
大風で土ぼこりが立つ
→土ぼこりが目に入って、失明者が増える
→失明者は三味線を買う(当時の失明者が就ける職に由来)
→三味線に使う猫皮が必要になり、ネコが殺される
→ネコが減ればネズミが増える
→ネズミは桶をかじる
→桶の需要が増え桶屋が儲かる
(引用元:wikipedia、一部表現を変更)
このように、原因から結論までの段階が多いとだんだん論理がねじ曲がってこじつけや屁理屈のようになり、話自体を素直に受け止めてもらえなくなります。「筋の通った話」と思ってもらうためには、途中過程はせいぜい3段階くらいにとどめておいた方が無難でしょう。
また、各段階で起こることへのツッコミどころも満載です。「土ぼこりが直接的な原因となって失明する人が増える」というのはちょっと想像がつきません。
百歩譲ってそういうことがあるのだとしても、「どれくらいの確率で起こる事象なのか」を考えると、やっぱり疑問符がつきます。つまり、「関係があること」と「それが起こる確率」というのはまったく別の次元の話として考えなければならないのです。
起こる確率が低いということは「因果関係が薄い」といえます。関係があるからと言ってそれらを無理に結び付けて論理展開してしまうと、誤った結論を出すことにつながってしまうので注意が必要です。
“論理的な間違いをしない”ためのワンポイント
- 論理展開はせいぜい3段階程度にとどめる。
- 「関係があること」と「発生確率」は別の話。