パートナーを100%信頼するのは「甘え」

◎ボスの言葉
「日本人はよく知らない人には壁を作るね。ところがいったん心を許すと100%信頼。だからちょっとしたことで騙された、裏切られたと大騒ぎするんです。華僑はどんな相手でも信用するのは99%までで、残りの1%は自己責任です。全面的に信頼するのは甘えなんですよ。自分で考えることを放棄して、相手に委ねているんだから」(85ページ)


「人を疑ってはいけません。友だちを信じなさい」と私たちは教わってきました。それは否定されるべきものではないでしょうが、過剰に信頼してしまうことは相手にとっても重荷になり、自分にも油断が生まれ、結局はお互いにとって良くないことになる可能性もあります。シビアにビジネスする彼ららしい考え方ですが、友人間や男女の間にも当てはまることかもしれません。

いちばんカシコイひとは3位を狙っていく

◎ボスの言葉
「中国人は皆ナンバーワンになりたい。でも華僑は1位取れても人に譲るくらいですよ。1位取ったら必ず狙われるんです。『三国志』の曹操も1位取ったのはすごいけど、結局殺された。死んだら意味ありません」(152ページ)


商魂たくましい華僑たちのこと、てっきり一番上を目指していると思いきや、この言葉。現実的でもある彼らは、ナンバーワンを夢見てそれをかなえられるのは、ほんの一握りの天才だけだということを知っているのです。しかも、その夢をかなえたとしてもポジションを維持するのは至難の業です。1位は常に狙われる存在で、油断すればあっという間に潰されてしまいます。また、2位は2位で、1位を倒すべく闘わなければなりません。

それに対して3位は、1位からはライバル視されず、2位からの攻撃も受けにくいのでそれなりのシェアを獲得できる。無理して2位になるよりは、下位の企業と手を組むなどして利益の拡大を図ったほうが得策なのです。

人間は生きている、ルールは死んでいる

◎ボスの言葉
「中国ではルール通りやるひとはアホです。頭を使って工夫して困難を成し遂げるのが人間でしょ」(164ページ)


大城氏の商談を初めて見た人は「まさか!」「ありえない!」を連発するそうです。それは一般的な商談のルールや、対人関係における暗黙の了解(空気、雰囲気)から外れていることが多いからだそうですが、これも華僑流。

私たちはすでに確立されているルールを逸脱することを嫌います。そのルールには上述のような、「何となく決まっている」空気のようなものも含みます。特に対人折衝においては、「嫌われたくない」「失礼にあたらないように」「空気を読まなければ」というような意識が先立って、商談の時でさえ「ここでこれを言うべきではない」などと考え、必要な主張ができなくなってしまいます。

華僑は違います。これは、「ルールよりも人間が優先」と考えるからだそうです。個人と個人の関係性は世間一般のルールに縛られるものではなく、あくまで個人同志で作っていくもの。「あなたと私のルールは、あなたと私で作りましょう」ということなので、従来の暗黙のルールなんて気にしないのです。

本書にはこうした大物華僑の門外不出の教えが満載。また、その教えから大城氏が導き出した「起業1年で結果を出す華僑流スタートアップ法」も初公開されている中身の「濃い」一冊です。起業家を目指している方はもちろん、いまの自分の仕事に行き詰りを感じているビジネスパーソンにとって、自分が一皮むけたように感じられる、とても刺激的な内容です。