もうひとつ、ラテラル・シンキングの例を見てみましょう。2018年7月、西日本に甚大な被害をもたらした豪雨災害により各所で「土砂崩れ」が発生。7月7日ごろには、広島県・水尻の海岸付近を走る2本の道路(下図右の「広島呉道路」および画面中央付近の道路)も土砂崩れによって通行不可能な状態になりました。

広島・水尻付近(Googleマップよりキャプチャ)

土砂やそれに埋もれた自動車が点在していたため、取り除いて復旧させるにも多大な時間がかかることが予想されましたが、異例のスピード復旧により7/11の夜には通行止めが解除されました。なぜ、短期間で該当区間を通行できるようになったのでしょうか?

普通に考えれば「土砂や障害物を除去→地盤の復旧→道路の舗装」というプロセスが必要です。しかし、国交省中国地方整備局がとった方法は「土砂に埋もれなかった海水浴場の駐車場(上図左)を、再舗装して仮道路に仕立てる」というものでした。

画像は「国土交通省 中国地方整備局」プレスリリースよりキャプチャしたもの

「仮道路」とされていることからもわかるようにこれは一時的な措置にすぎません。しかし、「交通網を復旧させる=通れさえすればいい」という観点に立ち「時間をかけて既存の道路を復旧させるのではなく、被害の少ない開けた土地を道路にする」という別のアプローチで解決したことは、ラテラル・シンキングの好例と言っていいでしょう。

実践! ラテラル・シンキング!

ラテラル・シンキングを理解するためのシチュエーションとして、『3分でわかるラテラル・シンキングの基本』(山下貴史著)より抜粋するかたちで、一つ例題を挙げてみます。

車を運転していたあなたは、上り坂の一本道で渋滞に巻き込まれます。すると、あなたの前の車がゆっくりとバックしてきました! もちろん、あなたの車の後ろにも車は何台も停車しており、バックはできません。一本道なので左右に逃げるスペースもありません。この状況で、あなたならどうしますか?

これをロジカル・シンキングで考えると、2つの対応を思いつくはずです。「クラクションを鳴らして、前の車に自覚させること」「可能な限りバックして前の車との距離を稼ぐこと」。下の図のようなイメージです。他にも解決策があるか、少し考えてみてください。

ロジカル・シンキングの発想による解決法
ロジカル・シンキングの発想による解決法の一例 (『3分でわかるラテラル・シンキングの基本』 p.16より)

これは、「前の車のドライバーになんとかしてもらう」という受け身のアクションです。しかし、もし前の車が気づかなかったり制御不能な状況だった場合には、車間距離を取ったことがかえって裏目となり、加速した車があなたの車にぶつかってくることになります。不可抗力なのに最悪の結末といえるでしょう。