歴史を学ぶ本当の意義──宮崎正勝氏インタビュー

『世界全史—⌈35の鍵⌋で身につく一生モノの歴史力』の著者である宮崎正勝氏は、長年教育の現場で学生たちに世界史を教えてきました。現在は、カルチャースクールなどで社会人を対象にした講義も行っています。今回は、そんな宮崎氏に、世界史を学ぶことの大切さや、そのためのコツについて話を伺ってきました。(聞き手:日本実業出版社編集部)

─本書の表紙には、人類の歩みを「早送りでフィルムを再生するように読む」とありますが、これについて、宮崎先生の考え方を教えてください。

視点を固定化させずに、全体の流れを見ましょう」ということです。いままでの世界史は、西洋史・東洋史などと地域ごとの歴史に分けて見ていく方法が一般的でした。しかしこの方法では、視点が固定化され、視野が狭くなってしまいます。そうすると、世界史の魅力であるダイナミックさが見えなくなってしまいます。

これだけ国際的になり、またインターネットが広く普及している時代を生きる人たちが歴史を理解するには、まずは細かな事象に目を奪われるのではなく、鳥瞰的、雲の上の視点から世界史をザックリと見て、理解することが大切だと思います。
その中でもっと詳しく知りたい地域や時代が出てきたら、個別に該当分野の本を読んで詳しく勉強していけばよいでしょう。

ー世界史を理解する際のポイントとは何ですか?

歴史の大きな流れ、トレンドをつかむことです。世界史は時代とともに、その時々の中心となるプレーヤーが変わっていきます。その動きをおさえながら、歴史の流れをつかむことが重要です。中心となるプレーヤーに必要なのは「軍事力」と「経済力」。ただし、面白いのは、それ以外にも「運」という要素が重要なことです。「運」は、変化を起こす条件の集まりです。

たとえば、ユーラシア大陸に広大な国家を築き上げたモンゴル帝国は、決して実力だけでそれを成し遂げたわけではありません。事実、モンゴル帝国を復活させようとしたティムールは、強大な軍事力・経済力を持ちつつも、途中で病死してしまい、チンギス・ハンのような大帝国を築くことができませんでした。また、砂漠地帯のアラビア半島からイスラム教徒の大征服運動が起ったり、アレクサンドロス大王がペルシャ帝国への遠征を成功させたのも、はっきり言って偶然の要素が強いと言えます。

しかし、世界史を勉強していくと、運を含めた小さな事象の積み重ねが、結果として大きな勢力に成長していく様子を見ることができます。これがトレンドとなり、世界全体を動かす勢いにつながるのです。

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