人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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フィジーのイロイロ大統領

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2006/12/11 10:29

 12月5日、フィジーでクーデターがあり、軍によって首相が軟禁された。8日には民生の中止を理由に英連邦の加盟資格を停止されるなど、南洋の島国が揺れている。軟禁された首相にかわって首相実務を代行していると報道されているのが、同国のイロイロ大統領である。

 フィジーは南太平洋に浮かぶ島国で、面積は日本の四国ほど。人口は85万だから、高知や徳島よりやや多い程度という小国。住民はフィジー系とインド系が大半で、フィジー系フィジー人がぎりぎり過半数を占めているという状況のため、両派の間の衝突も多い。
 世界一有名なフィジー人は、おそらくブロゴルファーのビジェイ・シン。世界各地のツアーを転々とし、’98年に全米プロでメジャーを制覇してトッププロの仲間入りを果たし、2004年にはタイガー・ウッズから世界ランキング1位の座も奪っている。彼の綴りは“Vijay Singh”で、メジャーになるまでは、日本では綴りに従って「ビジャイ・シン」と言われることも多かった。「シン」という名字でもわかるようにインド系で、かつて欧州ツアーでプレーした時には、ツアー唯一の有色人種だったという。

 さて、イロイロ大統領、正式な名前は、“Ratu Josefa Iloilovatu Uluivuda”である。このうち、「Ratu」はフィジー系の族長クラスの称号で、残りが「第一名前,第二名前,姓」という順になっている。フィジー人は「姓」の概念が希薄な国である。このこと自体は特に珍しいことではなく、アジアの非中国文化圏では、姓を使用しない国が多かった。フィジーの大統領も、「Uluivuda」という姓は法律的な時を除いては使用せず、しかも第二名前は省略形にすることが多い。その結果、自らも「ラツ・ジョセファ・イロイロ」と名乗るため、“イロイロ”が名字と誤解されることが多い(記事を書いている記者も理解しているかどうか)。
 フィジーを二分するインド系とフィジー系住民、日本人にはその区別はつかないが、フィジー人にとっては、名前をみただけで区別がつくはずだ。
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