人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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ソフトバンクの大隣選手

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2006/11/27 13:29

 21日に行われたプロ野球の大学社会人ドラフトで、ソフトバンクが希望枠で獲得した近畿大学の大隣憲司選手。この「大隣」という名字は、それほど珍しいという感じはしないが、実際には、鹿児島県知覧町以外にはほとんどいない。大隣選手は京都の出身だが、そりルーツはまず間違いなく知覧町にある。

 知覧町には大隣岳という山があり、その麓の知覧町大字塩屋には大隣という小字がある。地名は小字に過ぎないが、山の名前になっていることもあって大隣という名字は知覧町ではたいへん多く、町内の名字ランキングでは第5位にランクされるメジャーな名字なのだ。大隣岳の麓には、旧石器時代の登立遺跡もあり、かなり古くから人が住んでいたことがうかがえる。

 この大隣岳、角川書店の「鹿児島県地名大辞典」では「おおとなりだけ」で収録されているが、国土地理院の三角点一覧では「おんないだけ」となっている。地名の読み方は時代とともに変化していくが、実は、国土地理院では一度決めた名称はめったなことでは直さない。

 最後の清流といわれる四国の四万十川。国土地理院の採用する名前は、長く“渡川”であった。しかし、地元でも“四万十川”としかいわないことから陳情を続け、平成6年にやっと四万十川という名称が地図にも採用された。それでも、正式名称は“渡川水系四万十川”で、あくまで川全体の名前は渡川である、という姿勢を崩していない。
 大隣岳も、元々の読み方は「おんないだけ」だったが、今では地名を含め、「おおとなり」と呼ばれているのであろう。
 大隣選手も、本来は「おんない」選手だったかもしれない。
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