人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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土佐礼子のルーツはどこ?

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2006/11/20 10:25

 19日、雨の降る中で東京国際女子マラソンが開催された。今回の注目は、復活をめざす高橋尚子と、高橋をおしのけて五輪に出場した土佐礼子との一騎討ちだったが、土佐が返り討ちを果たして初優勝した。終盤失速した高橋は尾崎朱美にも抜かれて3位となり、今後の選手生命に黄信号がともったといえる。

 ところで、土佐礼子の出身は土佐(高知県)ではなく愛媛県の旧北条市(現在は松山市に合併)。実は、「土佐」という名字は徳島県や新潟県、秋田県などに多い。旧国名の名字と現在多い地域は、普通一致していない。また、旧国名の名字にはそれほどメジャーなものはなく、全国順位で2000位あたりの「土佐」姓はかなり多い方だといえる。
 名字の大多数は地名由来だが、基本的には自分の支配している地域の地名を名乗るため、大字や小字など、小さな地名を名字として使用していることが多い。一国まるごと支配していないと、旧国名の名字は名乗ることができないのだ。

 では、旧国名の名字のルーツはなにか、というと、大きく2つある。1つは、その国の出身という場合。江戸時代以前は、今ほど人の移動は激しくない。特に国を越えて他国に住み着くことは珍しかった。そのため、他国出身者は、名字として出身国を採用することがあった。
 もう1つは、屋号由来の名字である。屋号には、「鍋屋」などのように、扱っている商品を名乗っているものと、「越後屋」や「仙北屋」など、地名を使っているものがある。地名の場合は、出身地を表すものと、取引先を表すものがあった。こうした商家の場合、明治時代になって名字を届ける際に、「屋」をはずして登録したり、「屋」を「谷」に変えて登録したりした。たとえば、「越後屋」であれば、「越後」や「越後谷」を名字として登録することがあった(もちろん、「越後屋」のままで登録したり、本当の名字で登録した家も多い)。

 ちなみに、土佐礼子の「土佐」は旧姓で、現在の名字は「村井」。しかし、陸連には「土佐」で登録しており、陸上選手としては、「土佐」が正式である。
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