人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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夏の名字

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2006/07/03 11:30

 沖縄では梅雨があけ、東京でも晴れた日には30度を超すようになった。いよいよ夏を迎えるにあたって、今回は一足早く夏の名字をみてみよう。
 「夏」のつく名字で、一番多いのは漱石でもおなじみの「夏目」。全国順位は1,000位以内で、全国に1万人以上の夏目さんがいる。ルーツは長野県信州新町の地名で、清和源氏の流れを汲むものが多く、漱石の家系もこの末裔。のちに三河国(愛知県東部)に移って栄えたことから、現在でも愛知県東部から静岡県西部にかけて非常に多い。
 2番めに多いのが「夏井」で、全国順位は2,500位あたり、人口でいえば5,000人程度。秋田県を中心に東北に多い名字だ。
 実は「夏」のつく名字で一般的といえるのはこの2つしかない。この2つに続くのは、「夏山」「夏原」「夏堀」で、いずれも全国に1,000人ほど。「夏堀」は青森県独特の名字で、あとの2つは関西限定。これ以外で上位1万位以内に入るのは、やはり関西に多い「夏川」のみ。しかし、人口でみると、わずかに数百人に過ぎない。この他の「夏」のつく名字は、珍しい名字の部類に入る。
 意外なのは「夏木」。テレビではおなじみなのだが、実際には兵庫県姫路市付近に若干集まっているのみで、それ以外にはほとんどない。確かに、夏木マリの本名は「中島」、夏木陽介は「阿久沢」、夏木ゆたかは「馬目」と、皆本名は別だ。
 「夏」のつく珍しい名字には、「夏至」というものがある。石川県白山市にある名字で、江戸からこの地に移ってきた時、冬の寒さに堪え兼ねた先祖が、夏を待ち望んで名字を「夏至」に改めたという言い伝えがある。
 また、「梅雨」にちなむものに「栗花落」という名字がある。これは、栗の花が落ちる頃に梅雨に入ることから、これで「つゆり」と読むもの。落語の“考え落ち”のような、ひねりのきいた名字である。瀬戸内海の小豆島や神戸市にみられる。
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