日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。
交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。
2006/06/05 10:49
冒頭からいきなり問題。「六月一日」という名字、なんと読むだろうか。もちろん「ろくがつついたち」ではない。
答えは、この季節になると瓜の実が割れるので、「うりわり」。読めた方はかなりの“名字の通”、といいたいところだが、実際には“半可通”である。というのも、こんな名字は実際には存在しないからだ。
この「六月一日」という名字、珍しい名字の本や雑誌の特集、テレビ番組などではしばしば取り上げられるため、目にしたことのある人は多いだろう。しかし、実際に「六月一日」さんに会ったことがあるという人や、名字だけでなく名前まで記された書類などを見た、という人は聞いたことがない。ただ、「珍しい名字」という情報だけが独り歩きしているものだ。
最近はネット上で広がるものも増えてきた。よくみかけるのが、「十」書いて「つなし」と読む人に会ったというもの。要約すると、「タクシーに乗っていた時に運転手の名前をみると、十とあった。読み方を聞くと、ひとつ、ふたつ、・・・と数えていった時に、十だけは“とお”で“つ”がつかないから、“つなし”と読むんですよ、と教えてくれた」というものである。
この話は実に色々なところで、様々な人が自分の体験談として書き込んでいる。どうやら、日本全国のタクシー会社に「つなし」さんがおり、客に名字の解説をしているらしいのだ。これなどはもう都市伝説に近いといえる。「十」という名字は実在するが、数は非常に少なく、読み方も「もげき」である(「木」の両側の払いが、もげているので)。
私は、こういった名字を“幽霊名字”と名付けている。幽霊名字を初めて紹介したのが、1998年に日本実業出版社から刊行した「日本人の名字なるほどオモシロ事典」。以来8年間、名字愛好家の間ではそれなりに支持されており、ネット上で検索すると意外とたくさんヒットする。
みなさんも、怪しい情報に惑わされないように。