人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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吉原さんの原風景

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2015/02/02 11:01

三県県境の東に広がる谷中湖は、近年ハート形の湖として話題になった。この湖は自然にできたものではなく、遊水地として造られたものだ。この付近は、かつて足尾鉱毒事件の舞台となった場所である。

9.2キロに及ぶ湖の周囲はサイクリングロードとなり、レンタサイクルの事務所が何か所か設置されている。また、湖の北側は広大な平地が広がり、ここは万一の場合には遊水地となる、と記されている。

そして、この遊水地にはヨシが繁っていた。ヨシは水辺に生えるイネ科の多年草で、本来は「アシ(葦)」である。古代、日本のことを「豊葦原中つ国(トヨアシハラナカツクニ)」といったように、葦は日本には広く自生している植物である。



ヨシ(=アシ)


しかし、「アシ」という言葉が「悪(あ)し」に通じることから、「ヨシ」(良し)とも言い替えられた。ヨシは、すだれ(よしず)や茅葺屋根の材料として広く使われ、ヨシの繁っている場所を「よしはら」といった。このヨシ原にちなむ名字が「吉原(よしはら、よしわら)」である。

渡良瀬湖北側のヨシ原は、現存する日本最大のヨシ原といわれ、高さ2メートル近いヨシが一面に広がっている。いわば、吉原さんの原風景の地である。



ヨシ原
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