人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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「垳」という地名

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2015/01/13 10:27

「垳」という漢字を御存じだろうか。これで「がけ」という難読だが、JISの第二水準にも入っているため、ワープロで「がけ」と入力されると変換され、表示や印字も問題なくすることができる。

「垳」という漢字は中国にはなく、日本で生まれた国字である。この漢字がJIS第二水準にも採用されている理由は、埼玉県八潮市に「垳」という地名があるからのようだ。「垳」という漢字の意味は、「崖」と同じく「がけ」という和語(やまとことば)で、傾斜地のため「土が行く」という意味からできたものだろう。

ところが、この「垳」という地名が消滅の危機にあるという。近年各地で行われている地名改称の一環で、区画整理の際に各地にある独特の地名を、どこにでもある由来のない地名に変えてしまおうという動きである。

近年、土砂崩れなど自然災害が起きた際に、その地域のもともとの地名を知っていれば、ある程度は災害は防げたのではないか、という報道もある。八潮市では、この「垳」地名を守ろう、という運動がある。「八潮の地名を学ぶ会」では、定期的に地名について考えるシンポジウムを開き、本来の地名を変えてしまうことに対して警鐘をならしている。

なお、2月22日には私も地名と名字について講演することになっている。
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