人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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ヌデレバって、ンデレバ?

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2006/01/30 08:42

 29日の大阪国際女子マラソンでは、前評判通りケニアのヌデレバ選手が圧勝した。直前まで気温30度以上のケニアにいたヌデレバにすれば、スタート時10度以下というのは極寒。そのため、前半は大きく離された2位グループにいたが、中盤から徐々に追い上げ、33km付近で先行する小幡に追いつくと、あっという間に独走態勢を築いた。
 このヌデレバという名字、アルファベットで書くと、“Ndereba”。一般には「ヌデレバ」と言われているが、本当の発音は「ンデレバ」に近いのではないだろうか。
 アフリカには、“Nd”で始まる地名や人名がある。しかし、日本語では「ん」ではじまる単語はうまく発音できないため、カタカナに直すときに苦労する。現代南アフリカを代表する作家、“Ndebele”は、「ンデベレ」、ジンバブエの城壁都市グレート・ジンバブエの保護・研究で知られる“Ndoro”は「ンドロ」と書くことが多い。一方、ブルンジの大統領“Ndadaye”は「エンダダイエ」或いは「ヌダダエ」と書かれる。
 直接現地での発音を聞いたことがないため憶測にすぎないが、おそらく本当の発音は「ん」に近いのではないだろうか。しかし、日本人としては「ん」で始まる名字はうまく発音できない。そこで、大統領や世界的マラソン選手など、ニュースなどにも登場する有名人の場合は、日本人としても発音できる一番近い音にする一方、あまり有名でない人の場合はそのまま「ん」にしているのではないか。

 そもそも、外国人の名字をカタカナでどう書くか、ということに対しては、どこかで統一的に決めているわけではない。むしろ、最初に紹介した人がどう書いたか、に由来することの方が多い。有名人の場合は、何度か紹介されるうちにカタカナ表記が変更することもある。
 よく、名字を五十音順に並べると一番最後はなにか、という質問があるが、外国人まで対象にすると、「カタカナ表記のゆれ」という問題にぶつかるため、なんとも答えることができないのだ。
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