人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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八月一日

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2013/07/30 09:45

8月1日のことを「はっさく」という。漢字で書くと「八朔」だ。「朔」とは「ついたち(1日)」のことだから、文字通り8月1日を意味する言葉である。

しかし、江戸では「八朔」に特別な意味があった。徳川家康が豊臣秀吉から関東を与えられて江戸入りしたのが、天正18年の8月1日(旧暦)だったことから、毎年8月1日には大名や旗本などの武士達は江戸城に登城して将軍にお目見えした。これを「八朔の儀式」といい、武士にとっての祝日の一つであった。

また、庶民には別の楽しみもあった。この日、吉原では揃って白無垢の小袖を着て客席に出たり、おいらん道中を行ったりした。これは家康の江戸入りとは関係なく、元禄年間に遊女が病床から白無垢で客席に出たことに由来するという。

さて、農村ではさらに別の神事があった。旧暦の8月1日といえば現在では9月初頭。稲が実り始め、そろそろ台風シーズンを迎える頃である。そこで、稲の穂を摘んで神前に供え、豊作を祈願するのである。

名字にも「八月一日」や「八月朔日」という名字がある。群馬県などにある名字で読み方は「ほづみ」。ということは、この名字の由来は前述の3つ目であろう。江戸時代以降に生まれた名字は少ないと考えられるのだ。

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