人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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宮下町の由来

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2013/04/01 11:36

引き続き渋谷について。

山手線渋谷駅の北には、線路の東側に沿って細長い公園がある。公園とはいっても高架上で、フットサル場などもあり、公園としてのスペースは狭い。この公園は宮下公園といい、この付近がかつて宮下町であったことの名残だ。現在では渋谷区神宮前6丁目や渋谷1丁目という味気ない地名に変えられている。



宮下公園(線路側)



宮下公園(ガード下から)


宮下町とは、「宮」の「下」という意味。「宮」のつく地名や名字は全国にたくさんあり、通常「宮」とは神社のことである。神社は人んが住む場所にはどこでもあり、しばしば小高い所につくられた。その下が「宮下」で、そこに住んだ人が「宮下」さんなのだ。

しかし、渋谷の宮下町は神社に由来する地名ではない。戦前、この付近には皇族の梨本宮家の大邸宅があった。その下の方だったことから、宮下町という地名になったものだ。

戦前は、今よりずっと多くの宮家があった。梨本宮家は伏見宮貞敬親王の十男守脩親王が明治3年に一家を起こしたのが祖。その孫の守正王は陸軍大将・元帥で伊勢神宮際主であったことから、戦後皇族としては唯一A級戦犯に指名されている。戦後は皇籍を離れて、「梨本」を名字とした。

梨本家の邸宅は2万坪もあり、青山通に面した表玄関からは、玄関まで続く桜並木が見えたという。
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