人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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本郷もかねやすまでは江戸の内

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2013/01/15 10:22

好天に恵まれた13日、3年振りに湯島天神に詣でて来た。あいかわらずの大混雑で、何重にも重なった絵馬の数は夥しい量に登り、天神様もこれだけの数の願い事を聞くことがてきるのだろうか、と思ってしまう。

さて、せっかくのいい天気でもあり、お参りの後は最寄りの湯島駅ではなく、地下鉄本郷3丁目駅まで歩いてみた。湯島天神から西に600m程歩いて本郷3丁目交差点の角につくと、シャッターにひらがなで大きく「かねやす」と書いてある店があった。



かねやす


「かねやす」は、江戸時代初期に兼康祐悦が興した歯医者がもとで、やがて歯磨粉「乳香散」を発売して大当たりし、以後小間物屋に転じて成功した。

しかし、のちに暖簾分けした芝と本郷の店で本家争いとなり、大岡忠相の裁きで、芝は「兼康」、本郷は「かねやす」とすることで決着。そのため、今でも本郷に残る店は「かねやす」とひらがなで書くのが正式。

大火の多かった江戸では、江戸市中では火に弱い茅葺屋根を禁止し、瓦葺を奨励した。その際に大岡忠相は、本郷の「かねやす」までが江戸市中である、定めたのだ。そのため、「本郷も かねやすまでは 江戸の内」という川柳が生まれて有名になり、「かねやす」の店頭にも刻まれている。



かねやす 看板
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