人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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室井滋さんと対談

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2011/12/05 09:00

先日、雑誌の企画で女優の室井滋さんと対談した。

室井さんは富山県の出身。家は商売をしており、寺に過去帳も残る旧家だが、周りには「室井」という名字がほとんどいなかったという。

「室井」という名字は全国ランキングで1000位をちょっと下回るあたり。それほど珍しい名字ではないのだが、全国の半数近くが栃木県と福島県に集中している。とくに栃木県北部から会津地方にかけて非常に多く、栃木県の旧黒磯市(那須塩原市)では一番多い名字が「室井」だった。

次いで福島県南会津町に多く、ここには国の重要文化財に指定されている室井家住宅というのもある。室井さん自身も収録で訪れた際に現地の「室井」さんに出会ったことがあるとか。この他、関東の残りの地域に約三割があり、富山県をはじめ西日本では珍しい名字といえる。

由来などははっきりとはしないが、「室」とは地形的にくぼんでいる場所のことだろう。一方、「井」は水汲み場のことだから、こうした場所に由来する地形姓である。

室井さんの直接のルーツはわからないが、商売をしていたということは、他地域から移り住んできた可能性が高い。というのも、土地に縛られている農民が他地域に移住するのは難しいが、商人は土地とは切り離すことができるので移住が可能なのだ。また、開拓以外でよそから移り住んでくると、その場所に土地を持たないため、商業を始めることが多い。

栃木か会津の室井家の一族が、江戸時代頃に何らかの事情で富山に転じて商売に成功したものかもしれない。

詳しくは、7日発売の「婦人公論」に掲載されています。



室井滋さん(写真右)と筆者・森岡氏
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