人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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十津川村と新十津川町

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2011/09/26 13:41

台風12号による豪雨により奈良県十津川村に緊張が続いている。明治時代の大水害のあとに造られた土砂ダムが、今決壊の恐れがある、と指摘されているからだ。

今から122年前の明治22年、高知県安芸市に上陸した台風は、四国・中国地方を北上して日本海に抜けた。今回の台風と全く同じコースである。台風は、一般的に中心の右側により大きな雨雲があり、これがぶつかる南東向きの斜面で大雨が降ることが多い。

このときも紀伊半島に豪雨をもたらし、十津川村では川がせき止められて湖が出現するという大水害となった。

その結果、十津川村では集団離村を決意し、新天地を求めて北海道石狩平野のトック原野に移住した。移住した人は600戸2489人にも及び、移住先は故郷の地名をとって新十津川と名づけられた。今の北海道樺戸郡新十津川町である。

新十津川には、のちに北陸からの入植者もあり、冷害に強い品種を改良することで、やがて北海道有数の穀倉地帯に発展した。

新十津川への入植については、司馬遼太郎「街道をゆく 15 北海道の諸道」に詳しい。現在でも新十津川の町民は、奈良の十津川村を母村と呼んで交流が続いており、両町村の町の章も同じものを使用している。

今回の災害にあたって新十津川町では「母村十津川村民の方々の生活を支援することを目的」とした「奈良県十津川村台風12号災害義援金」を募って支援を行っている。北海道では、この他にも今でも入植元とのつながりを保っている地域がある。
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