人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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「あべ」一族のルーツへ

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2011/04/11 10:01

久米寺を訪ねたあとは、近鉄橿原線で北上し大和八木駅で大阪線に乗り換えて桜井駅で下車。この南の方に「あべ」一族のルーツがある。

「あべ」のルーツについては、2006年9月の連載46回目で書いたが、今回は実際に訪れてみた。

桜井駅から商店街を抜けて南に15分ほど歩くと、田園地帯が広がっている。多武峯の麓にあたるこの付近一帯が古代豪族・安倍氏の本拠地である。ここには安倍文殊院という立派な寺があり、境内には安倍仲麻呂望郷のしだれ桜というものがある他、なんと古墳まであった。



「あべ」の田園風景


安倍文殊院


ここからさらに南西に向かって数分のところには安倍史跡公園があった。一見なんの変哲もない公園だが、広場の片隅に盛土した場所があり、これが7世紀に建立された安倍一族の氏寺、安倍寺の伽藍跡ということだ。



安倍寺の伽藍跡に建つ石碑


ちなみに、こうした史跡や、小学校は「安倍」と書くが、現在の公式な地名は桜井市「阿部」。名字のうえでも、「あべ」にはいくつかの書き方がある。「阿部」と「安部」が多く、次いで「安倍」。この他にも、「安陪」「阿倍」など様々な「あべ」さんがいる。



安部小学校正門


電柱の住所表記


これらの「あべ」さんのルーツは原則として同じで、この安倍の地である。古代、大王家(天皇家)を中心としたヤマト王権を支えた安倍一族が、今の「あべ」さん達の先祖である。
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