人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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久米一族のルーツ

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2011/04/04 10:32

今年は甲子園の帰りに奈良県でいくつかの場所を回ってきた。
まず、最初に訪れたのが久米である。

「久米」とは、古代大和朝廷で軍事的な役割を果たしていた久米部に由来する名字。『日本書紀』の天孫降臨では、大伴氏の遠祖にあたる天忍日命(アメノオシヒノミコト)が、大来目命(天久米命)を率いて瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)を先導して天降ったとあり、大伴氏のもとで軍事的な役割を果たしていたことがわかる。

この久米一族の本拠地が大和国久米(奈良県橿原市)で、また久米部に由来する各地の久米地名に住んだ一族も「久米」を名乗った。

久米の地は畝傍山の南側で、近鉄橿原神宮前駅の西側。今はごく普通の住宅地だが、ここには久米寺が残っている。



久米寺



久米寺本殿


久米寺にある縁起によると、聖徳太子の弟の来目皇子が創立したとあるが、これは鎌倉時代頃から言われ出した説。実際には久米氏代々の氏寺であろう。

また、久米といえば『今昔物語』にも登場する久米仙人が有名。仙術を体得して飛行術を身につけたが、飛行中に川で洗濯をする女のふくらはぎを見て仙力を失い墜落、その女と結婚したという。



久米仙人


のちに一念発起して仙術を回復し、久米寺を建立したと伝える。久米寺の本堂前には、久米仙人の像もあった。

現在、久米姓の全国順位は800位台。四国や東海地方、秋田県などに多い。
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