人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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坂本龍馬の先祖

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2010/01/06 10:32

3日、NHKの大河ドラマ「龍馬伝」の第1回放送があった。初回の視聴率は23.1%(関東地区,ビデオリサーチ調べ)と、まずまずの出足である。

今回の放送で驚いたのが、同じ武士の間での身分差別を前面に押し出していた点だ。数年前の大河ドラマでは、藩の重臣クラスと最下級の武士や農民が、身分差もなく友達づきあいをするという現代劇的演出もあっただけに、今回は「封建時代における身分差別の打破」をメインテーマにしていると感じられる。

さて、その龍馬の家系だが、坂本家は郷士と呼ばれる土佐藩の下級藩士だった。しかも、先祖代々の郷士ではなく、龍馬の曽祖父の坂本直海の時に郷士の株を買ったものである。

江戸後期には、幕府の御家人株なども売買されており、裕福な商家などが御家人株を購入して息子を武士にする、ということは珍しくなかったのだ。

ドラマには出てこなかったが、郷士坂本家の本家は、才谷屋という高知城下ではかなり羽振りのいい商家であった。江戸初期に郊外の才谷村から城下に出てきて質屋を開いて成功し、のちに酒屋も兼業していた。

龍馬の時代にも才谷屋は知られた存在で、その一族の龍馬が、ドラマほど上士のいやがらせを受けていたとは考えづらい。

ところで、坂本家には先祖に関する伝説がある。それは、坂本家は明智光秀の一族の末裔である、というものだ。

光秀は、織田信長を本能寺で討ったあと、わずか12日で天下を失ったが、一族の明智左馬之助は近江から土佐に落ち、才谷村(現在の南国市)に住んで坂本家の祖となったと伝える。

もちろん、この話は伝説にすぎず信憑性は全くないが、一介の商家や郷士にも、こうした家系伝説が残っているのだ。
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