人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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寅のつく名字

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2009/12/28 09:55

来年の干支は寅。今年も、最後は干支にちなんで「寅」のつく名字をみてみたい。

しかし、今年の「丑」と同様、干支で使う漢字を使用する名字は少ない。一番多いのは「寅丸」。広島県と香川県に多いとはいうものの、「寅」で始まる名字のうちで一番多いだけで、どちらかというと珍しい名字の範疇にはいる。

次いで多いのが青森県三戸郡階上町の道仏地区に集中している「寅谷」で、読み方は「とらや」。一般的に、「〜谷」という名字は、西日本では「〜たに」と読むのが普通だが、東日本では「〜や」の方が多い。特に、東北ではほとんどが「〜や」と読む。

以下、関西に集中している「寅本」「寅野」と続くが、このあたりになると、もうかなりレアな名字である。

では、幹事として一般的な「虎」で始まるものはどうかというと、一番多いのは「虎谷」。こちらは北陸から西日本にかけて多く、読み方も「とらたに」が主流。富山県魚津市には「虎谷」という地名があり、ルーツの1つと見られる。

以下、岐阜県土岐市に集中している「虎沢」、西日本に広がる「虎尾」と続き、いずれも「寅」最多の「寅丸」の二倍以上ある。

4番目の「虎岩」は仙台市に多い名字だか、ルーツは長野県の地名。諏訪氏の一族が虎岩に住んで「虎岩」を名字とし、のち奥州に移って伊達氏に仕えたという記録が残っている。

そもそも、日本には虎はいなかった。「虎」や「寅」で始まる名字が少ないのも当然のことだろう。

なお、「乕田」のように、「乕」という漢字を使うこともある。
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