人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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エチオピアのケベデ選手と名字

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2009/12/14 17:07

6日に行われた福岡国際マラソンでは、日本人の入賞者がなしという寂しい結果に終わった。世界のトップクラスで次々と活躍する女子にくらべて、近年の男子は落ち込みが激しい。

この大会に優勝したエチオピアのケベデ選手のタイムは2時間5分18秒。日本人トップの下森直選手のタイムは2時間14分42秒だから、なんと9分以上もの大差がある。距離にすると実に3キロ以上だ。この差を埋めるのは難しいだろう。

さて、この大会、2位に入ったのもエチオピアの選手だったが、名前はやはりケベデ。新聞では、1位がTs.ケベデ、2位がTe.ケベデとして区別していた。この2人、別に血縁関係はない。一部新聞には、「エチオピアにはケベデという名字が多い」という本人の談話?も書かれていたが、実はケベデは名字ではないのだ。

そもそも、エチオピアには名字という概念はない。基本的に、自分の名前と父親の名前をつなげて使用している。つまり、「Ts」や「Te」が本人の名前であって、「ケベデ」というのは父親の名前である。

従って、省略するのであれば、ツェガエ(Tsegaye) K.,テケステ(Tekeste) K.とするのが正しい。かつてのマラソンの王者アベベ選手も、正しくはアベベ・ビキラだが、誰も「ビキラ」選手とはいわなかった。

エチオピアでは、自分の名前の後ろに、父親、祖父、曽祖父・・・と、数代にわたっての先祖をつなげる人も珍しくないという。

どの国の人でも、人名は「名前+名字」で構成されているというのは幻想に過ぎない。欧米のルールが世界中どこにいっても正しい、というわけではないのだ。
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