人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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鬼屋敷選手の名字

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2009/11/02 09:12

10月29日にあったプロ野球のドラフト会議では、ドラフト指名66人と育成指名17人の、計83人が指名された。指名された選手には、この日が最高の1日だった、ということにならないよう、頑張ってほしいものだ。

さて、指名された83人の名字をみてみると、今年も珍しい名字がいくつかみられる。4年越しの宿願を果たした巨人1巡目の長野(ちょうの)選手の名字について昨年書いたので別にすれば、同じく巨人が2巡目で指名した「鬼屋敷」という名字がインパクトがある。

鬼屋敷正人選手は、三重県の近大高専の3年生。高専からのドラフト指名は史上初ということもあったが、「鬼屋敷」という名字についても、翌日のスポーツ紙では話題になっていた。一部の新聞には全国に40件、と書いてあったが、そんなにあるのだろうか。おそらくその半分もなく、三重県の紀宝町に固まっている。鬼屋敷選手も紀宝町の出身である。

「鬼」とは、一般にイメージするような「オニ」ではなく、「強い」という意味合いが大きい。また、熊野地方では、役行者の高弟の末裔に「鬼(き)」を名字の一部にした一族があることも知られている。戦国時代に水軍大名として知られた九鬼氏もこの地方の出身であるなど、この地域には「鬼」のつく名字が多い。

「鬼屋敷」とは、こうした「鬼」を名乗る一族の住んでいた屋敷の持ち主がルーツの名字だろう。「鬼」を「キ」と読むことからも、役行者の関係の可能性が高そうだ。
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