人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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円垣内選手が活躍

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2009/07/27 13:25

26日、高校野球神奈川県大会準々決勝を地元TVKの中継で見た。

今年のドラフト1位は確実といわれるスラッガー筒香選手を擁する横浜高校が横浜隼人高と対戦、序盤の大量失点を8回・9回に追いついたものの、ひと押しが足りずに延長となり、サヨナラ負け。

それも、筒香が三塁線のあたりを好守で捕りながら一塁に悪投したのがきっかけ。8回のチャンスでは2死一二塁で敬遠されて相手ベンチをにらみつけ、9回の勝ち越し機には凡退と、不満のたまる試合だったらに違いない。

さて、筒香という名字については、以前このコラムで取り上げた。実は、神奈川県にはもう一人全国区のスラッガーがいる。それが、この日向上高を破って準決勝に進んだ、横浜創学館高の円垣内選手である。これで「えんがうち」と読む。

横浜スタジアムの中段に特大のホームランを放った翌日の新聞には、「先祖は海賊と聞いているが、名字の由来はわからない」という父親の談話がスポーツ紙に掲載されるなど、筒香とともに、珍しい名字が話題となっている。

「円垣内」は福岡の名字で、西日本に点在する垣内系の名字の一つだ。新しい土地を開墾した時に、その所有者を明確にするために、土地の周囲を竹垣で囲んで区別した。こうした土地を垣内といい、「かいと」とよんだ。ここに住んだ人が名乗ったのが「垣内」さんだ。読み方は本来は「かいと」だが、現在では「かきうち」の方が多い。

また、上下に漢字がついたり、「垣内」の部分も「垣外」に変化したものもある他、読み方も「〜がうち」「〜がいち」となるなど多くのバリエーションがある。たとえば、男子バレーボールの中垣内選手は「なかがいち」と読んだ。これらをひっくるめて「垣内」系の名字とよんでいる。

「円垣内」というのは、円い形状の垣内が由来なのだろう。それにしても、「筒香」も「円垣内」も、全国に数世帯しかない稀少な名字。一族の名をあげる絶好の機会だ。
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