人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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平城京の読み方

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2009/06/22 10:07

このほど平城宮跡(奈良市佐紀町)の第一次大極殿院の調査が終了、20日に現地で説明会が開催され、760人もの人が参加した。

1959年から断続的に続いた第一次調査はこれで終了し、来年の平城遷都1300年記念事業に向けて、回廊などの復元整備が始まることになる。

ところで、この「平城京」をなんと読んだだろうか。1961年生まれの筆者は、当然「へいじょうきょう」と読む。今でも大多数の人は「へいじょうきょう」と読むのではないだろうか。

実は、今の教科書では「へいぜいきょう」とフリガナが振ってあるものがある。確かに、平城天皇は「へいぜい」と読むから、天皇と都で読み方が違うのはおかしなことだ。

漢字には音読みと訓読みがあるが、さらに音読みには、漢音と呉音がある。「平」を「へい」と読むのは漢音だが、「城」を「じょう」と読むのは呉音。漢音に統一すると「へいぜい」となる。しかし、世間では「へいじょう」と読む人がほとんど。そのため、平城遷都1300年記念事業の読み方も「へいじょう」となっている。

では、当時も「へいぜい」と読んでいたのか、というと実はそうではない。訓読みして「ならのみやこ」と読んでいたという説が有力。平城京は、はじめて平地に築かれた都である。そのため、「平らなところ」を意味する「なら」の「みやこ」といわれ、それに「平」という漢字をあてたのだ。そして、地名は漢字二文字という習慣に従って、「平城」にしたといわれる(異説もある)。

実は、他にも読み方や表記の変わった歴史用語はたくさんある。「新羅」や「百済」は「シルラ」「ペクチェ」というのが主流だし、江戸時代初期の「島原の乱」は、今の中学校教科書では「島原・天草一揆」という表現になっている。歴史はいつまでたっても同じ、というのは幻なのだ。
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